研究課題
本研究の目的は、SONIC研究参加者に対して追跡調査を行い、感情の経時的変化に関する縦断的検討を行うことである。SONIC研究ではNarrow range age design に準拠した年齢幅が3歳の3年齢群(70歳、80歳、90歳)を関東・関西の都市部と田園地域において悉皆で対象者を抽出し参加を呼びかけ、公民館等を利用した招待型調査を実施してきた。本年度は、70歳群の第4波調査を行うとともに、調査が早期に終了したため、データ整理をすすめた。また、これまで把握することができなかった、縦断調査からドロップアウトした参加者に関する情報を再収集した。これらのデータを整備すると共に、引き続き、国際共同研究を推進するためのデータセットの英語化を進めた。研究成果としてはIADLが抑うつ傾向に与える影響が年齢によって異なることを確認した。また、慢性疾患が認知機能に与える影響も同様に年齢によって異なることを確認した。この現象は異なる年齢群では生のプロセスと死のプロセスの比重が異なることによって生じると推察できる。したがった、両プロセスのバランスで高齢期のポジティブ感情およびネガティブ感情が決定するという本研究の中核的仮説を部分的に支持するものだといえた。また、活動の指標である余暇活動が認知機能と運動機能に対して影響することと、また認知機能と運動機能の間には両方に影響を与えあうことが明らかになった。また、精神的健康は両者の関係から独立していることが示された。この結果は70歳高齢者での結果なので、80歳、90歳においてこれらの関係がどのように変化するかを検討することで、生のプロセスが低下し、死のプロセスが上昇した時の影響を検証するための基礎的にモデルができた。
3: やや遅れている
今年度は、追跡調査のデータ収集および整理に関しては順調に推移した。しかしながら年度の終盤においてコロナ禍のために、予定していたドロップアウト者の電話調査および転記調査を実施することができなかった。
来年度は、平均年齢89歳の追跡調査を実施する予定であったが、コロナ禍のため会場招待型の調査を実施することがほぼ不可能になった。代替案として郵送調査を実施するとともに、会場調査を次々年度に延期することを計画している。データ収集が困難な分計画されていたデータ分析に重点をおいて研究を推進する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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