研究課題
本研究は、「失われた10年」と言われた世代が40代となり、年長フリーター(厚生労働省、2010)などとかつてない問題を抱えている現状を踏まえ、その世代の青年期から中年期の時間的展望とアイデンティテの発達過程を描くことで、成人期における人生の支援への示唆を提言することが目的である。第1に、本研究は同じ人を長期にわたって寄り添い追跡していく縦断研究であり、本年度もこれまでと同じ質問紙調査を実施した。具体的には、研究協力者に、アイデンティティ尺度(加藤、1983)と体験的時間的展望尺度(白井、1997)および時間的指向性質問項目(白井、1997)による質問紙調査を行った。第2に、31年間の縦断研究によって質問紙調査で蓄積してきたデータを使って時系列分析を行った。理論的には、アイデンティティが弱くなると未来指向が上昇して自分の目標や信念を探求し、それが獲得されるにつれて未来指向が弱くなっていくと考えられるが、そのようにゆらぎのある相互変化パターンについて検討したところ、そのありかたには多様性が見られ、必ずしも理論的に想定される相互変化パターンだけではなかった。第3に、本研究は31年間に及ぶボトムアップ型長期縦断研究であるが、そのような研究が個人の幸福追求に資する意義について検討した。本研究は質問紙調査による量的研究のみならず、20代、30代、40代の人生の語りについての面接調査も実施していることから、両者の異なるアプローチから得られる結果の違いや重なりを考えることができる。そのため、「誰が想定する誰にとっての幸福か」を意識するが、そのことにより「第三者や理論が想定する幸福」と「主体が想定する個人の幸福」とのバランスをいかに図るのかを考えることになり、それこそが生涯発達心理学の大きな課題であることを示唆した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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大阪教育大学紀要(総合教育科学)
巻: 71 ページ: 393-412
10.32287/TD00032527
発達心理学研究
巻: 33(4) ページ: 234-243