研究課題
本研究では、子どもの感情制御の発達を検討するために、次の2つの研究を実施する。研究1では、子どもの感情制御場面における認知的再評価方略と抑制方略の遂行時の脳波を測定するとともに、感情制御に関わる遺伝子多型データを収集し分析を行う。研究2では、感情制御チャレンジ課題(Waiting課題、プレゼント課題)と社会的・認知的課題(他者感情理解、実行機能)を実施し、同時に養育者への質問紙調査(子どもの気質、問題行動傾向、養育者の気質、養育態度)を行う。本年度は、幼児・児童を対象に研究1および研究2のデータ収集を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により子どもを対象に実験を実施することは困難であった。そのため、収集済のデータのうち子どもの遺伝子多型の解析を実施して、他の感情制御要因との関連を検討した。また、新たなデータとして養育者とその子どもを対象にインターネット調査を実施し、感情制御の発達とその関連要因について収集した。子どもの遺伝子多型の解析の結果から、感情の安定性などに関わるセロトニントランスポーターの遺伝子多型を調べたところ、40人の子どものうち、ss型は20名、sl型は18名、ll型は2名であった。ss型(20名)と、l型を含むsl型・ll型(20名)の2群に分け、他の感情制御要因との関連を検討した。その結果、遺伝子多型がss型の子どもは、l型を含む子どもよりも、感情制御尺度(ERC:Shields & Cicchetti , 1997)の不安定・ネガティブ(Lability/ Negativity)の得点が高い傾向にあった。(項目例:イライラしやすい。怒りを爆発したりかんしゃくを起こしやすい。)今後は遺伝子多型と感情制御の発達要因との関連をさらに分析するとともに、養育者とその子どもを対象に実施したインターネット調査の分析を進める計画である。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウィルスの影響により子どもの実験のデータ収集が困難であったが、収集済のデータについて遺伝子多型の解析を実施し、子どもの感情制御の関連要因の分析を進めることができた。また、子どもとその養育者を対象にインターネット調査を実施し、感情制御プロセス及びその関連要因についての研究は、おおむね順調に進展している。
今後は遺伝子多型と感情制御の発達要因との関連をさらに分析するとともに、養育者とその子どもを対象に実施したインターネット調査の分析も進める計画である。新型コロナウィルスが収束した場合は、さらに多くのデータ収集を実施する予定である。
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