研究課題
本研究の目的は、思春期の自尊感情の低下を引き起こす要因を明らかにするとともに、どのような自尊感情の低下が児童生徒の問題行動と結びつくのかを明らかにし、介入が必要な児童生徒への支援策を提案することであった。具体的には、小学4年生から中学3年生を対象に縦断調査を行い、思春期の自尊感情低下に係わる要因を身体・対人・認知的要因から検討し、内在的・外在的問題行動との関連を検討することであった。研究期間内に年2回、6年間の縦断調査を行い、計12時点のデータを得た。その結果、以下のことが明らかになった。1つは、思春期の自尊感情低下に係わる要因としては、思考(具体的には批判的思考態度の発達)が関係しており、身体的な要因は関係していないことが明らかになった。つまり、思春期の自尊感情の低下は、批判的な思考が発達することによって生じている可能性が考えられた。また問題行動との関連については、自尊感情の低下よりも、教師との関係といった対人関係の要因が強く関連していることが明らかになった。具体的には、不登校傾向と関連すると考えられる学校享受感の縦断的な変化を検討したところ、自尊感情よりも教師との関係が強く関連しており、特に小中移行期における学校適応には、短期的にも長期的にも教師との関係のあり方が影響を与えていることが明らかになった。以上を踏まえ、思春期における自尊感情の低下は、必ずしもネガティブな現象ではないこと、その背後には思考の発達といったポジティブな変化が隠れている可能性が示唆された。加えて、問題行動への対応としては、自尊感情の向上を目指すプログラムよりも、教師の児童生徒との関係のあり方を見直すような実践の在り方が重要であることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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人間と教育
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10.3390/adolescents2020020
世界の児童と母性
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