研究課題
本研究は,トップダウンの認知制御が3つの注意の下位成分を変調しうるかを調べた。注意ネットワーク課題を用いて,認知エフォートをすべて投入する場合と,自分がもつ半分の認知エフォートのみを投入する(すなわち,本気を出さずに気楽に認知課題を行う)場合を設けた。行動成績は当初の通り,予定した効果を概ね再現することができたため,この手法は妥当であるといえる。一方で,前年までに実施した脳機能計測実験の結果を再分析したが,予測した部位での神経活動と,認知資源の意図的配置との関連は得られなかった。具体的には,左右頭頂側頭接合部及び内側前頭前野での活動を焦点領域とした分析を行ったが,注意の空間的低位,実行制御,および警戒の3成分のいずれとも相関を認めなかった。したがって,これらの3成分をオンラインで取りだし,ニューロフィードバックによって特定の成分の注意が関わる行動を増強することは実現できなかったといえる。こうした結果に鑑み,本年度の後半は適応的行動に限定して,注意の個人差が顕著に表れる認知活動の増強を目指す派生プロジェクトを2つ進めた。1つはオンラインでの注意の空間的焦点化成分のフィードバック,もう一つは視空間作業記憶容量と音源定位活動の対応測定である。前者については,Bernstein & Zvielli (2014)による意識的フィードバックを利用した方法を,探索効率に反映させる試みを行った。その結果,予期したフィードバック効果は全く得られなかったことから,意識的フィードバックは空間的焦点化とはうまく整合しないことがわかった。一方,音源定位課題で音源から標的までの距離を操作し,標的検出感度を測定し,同じ被験者の視空間作業記憶容量を測定したところ,増加の程度には個人差が認められた。エコロケーションによる検出能力は視空間作業記憶容量によって予測できる可能性が示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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