研究課題
1.モデルフリー方略とモデルベース方略を扱う意思決定課題と計算論モデルについて、先行研究の問題点を検討し、より洗練された新たな課題とモデルを作成し提唱した。この成果は、国際的な学術ジャーナルに論文として発表した。2.モデルフリー方略とモデルベース方略、およびそこへの身体反応の関与、の神経基盤として島皮質、線条体、前頭前皮質を関心部位として考え、それらの脳部位の機能が意思決定方略に及ぼす影響を検討するため、MRSと安静時fMRIによる神経画像法が有効であるという示唆を得た。そこで本年度には、これらの技法により神経画像を撮像し、計算論モデルにより推定した意思決定のパラメータとの関連を探索すべく、少数事例(N=6)を対象とした予備実験を行った。その結果、特に島皮質の機能はさまざまな意思決定パラメータと関連を有するという示唆を得た。平成30年度前半には、この研究の本実験を開始する。3.モデルフリー方略とモデルベース方略、およびそこへの身体反応の関与を、より精緻な時間スケールで検討するために、課題遂行中の脳波と各種の生理的反応を同時計測し、それらの多数の指標の振る舞いを階層的計算論モデルで記述する研究の計画を立案し、その準備を行った。この実験は、平成30年度前半に開始する。4.島皮質を中心とする脳と身体の機能が意思決定に関与する概念的モデルとして、現在認知神経科学において優勢となりつつある予測的符号化に基づいたモデルを考案し、総説論文として学術的ジャーナルに発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の肝である、モデルフリー方略とモデルベース方略を扱う意思決定課題と計算論モデルについて最新かつ重要な知見を得ることができ、論文として公刊することができた。残りの期間中、これらの実験パラダイムを利用することができる。MRSと安静時fMRIという新しい神経画像の組み合わせについて予備実験を行い、有望な知見を得ることができた。空間分解脳を重視した神経画像に対し、脳波は時間分解能に優れた技法である。これらを組み合わせることで、本研究の知見はより豊かになると期待される。脳波を用いた実験の環境を整え、研究計画を立案できたので、平成30年度前半には実験を開始することができる。
平成30年度には、意思決定課題と計算論モデルについてさらにデータを蓄積し、関与すると考えられるあらゆるパラメータの影響力を精査し、モデルを完成させる。その上で、MRSと安静時fMRIにより神経画像を撮像すると共に、それらの課題により意思決定のパラメータを推定し、モデルフリー方略とモデルベース方略の神経基盤を同定する。さらに、同様な課題を遂行している間に脳波と各種の生理的反応を同時計測し、モデルフリー方略とモデルベース方略への脳と身体の機能的関連を、リアルタイムに可視化することを目指す。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (4件)
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