研究課題/領域番号 |
17H02662
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
河野 麻沙美 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (00539520)
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研究分担者 |
辻村 貴洋 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10546790)
辻野 けんま 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (80590364)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 授業研究 / 教師の学習文化 / 教師教育 |
研究実績の概要 |
本年度は現地(ドイツ・オランダ)に趣き、授業研究を推進する研究者、教師教育者へのヒアリングを行った。また、授業研究を実践する学校の管理職、教員リーダー、及び教員へのヒアリングと実際の授業参観を行った。特にオランダを対象とし、教師教育を含めた学校教育制度、教員の勤務態様、授業研究実施の実践的課題に焦点を当て、実地調査、ヒアリングと、事前調査の結果を対照させて検討した。 研究成果は以下の3点に要約できる。 1つはオランダでは授業研究を推進する研究者・教師教育者が中等教育を中心に担っていることから、中等教育で広く取り入れられ、実践されていることが示唆された。これは、日本やアジアでは初等教育を中心に普及し、中等教育での実施は比較的困難とされている実態を踏まえると授業研究普及の観点から新たな角度での考察をもたらすと考えられる。2つ目は、日本とオランダでは、教員の雇用、及び勤務態様の違いが見られ、授業研究を実施・運営する際に管理職の学校経営やその権限が重要な機能を持つことが明らかになった。教員の給与や勤務時間、それへの自律的な選択権等の勤務態様は日本とは大きく異なっている。日本での教員の働き方改革はその方法によっては、授業改善やその質的向上に資すると考えられる授業研究に影響を与える可能性があるため、オランダの状況下での授業研究の実施は、今後の日本での学校経営と授業研究運営との関係を考慮する際に示唆を与えるものとなると考えられる。3つ目は、授業研究を同僚間での協同的な授業改善や同僚性構築に機能させることに特化した実施が特徴的である点である。オランダでは相互に授業を参観し、学習を分析することを主たる目的とした科目・学習内容・教育方法をともに開発して授業を特設することで実施している点である。授業研究導入の趣旨を踏まえ、現地の実態に即した形で授業研究の実施手法が改修された点として指摘できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地での実地調査を行い、授業研究の実施状況やその経緯、学校での実態を教師や教師教育者へのヒアリングを行うことができた。 ヒアリングを通して、事前調査・検討時の課題として、学校経営との関係、学校を管轄する教育行政との関係など、資料では十分に把握できないオランダの状況を授業研究運営の視点から捉えることができたこと、また、日本では文化として根付くことで制度では説明できない側面について視点を先鋭化することができた。一方、教師がどこでどのように授業について学んでいるかという教師の学習については、根本的に異なる方法が取られており、教師教育者という存在に再検討が求められることとなり、新たに検討すべき課題として取り上げる必要性がある。これは関連する制度や学校経営に加え、教師側の認識についての研究方法が研究遂行上の課題となり、年度内での解決が困難であったため、次年度以降の検討課題とすることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、欧州での実地調査を授業研究の実践校、及び支援者に対してのヒアリングと合わせて行うことを予定している。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、学校のみならず、地域でのロックダウン等が行われると遂行困難になるため、オンラインで代替することを検討している。また、学校での授業研究がコロナ禍において再検討されることも予想されるため、現地の研究協力者と情報を共有しながらすすめる。必要に応じて、代替となる調査や研究を検討するが、時代・社会の状況に強く影響を受ける研究対象(授業研究)の特性を鑑みると、国内、及び対象とする欧州の状況を踏まえた研究計画の修正、遂行を見直す必要があるため、国内外の情報を収集しながら、本研究課題を遂行する。
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