研究課題/領域番号 |
17H02670
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
太田 素子 和光大学, 現代人間学部, 教授 (80299867)
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研究分担者 |
椨 瑞希子 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (30269360)
浅井 幸子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30361596)
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50221958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プロジェクト・アプローチ / 幼児期の学び / 保育のドキュメンテーション / 保育実践 / 知的教育 / 探究的保育 / 幼小接続 / ECEC |
研究実績の概要 |
2017年度は、スウェーデンとイギリスに関する現地調査を充実して進めることができた。スウェーデンには2017年10月に1週間、イギリスには2018年3月に1週間、それぞれ滞在し、プロジェクト・アプローチによる具体的な実践の見学と、現地の理論的なリーダーとの意見交換をおこなった。 スウェーデンでは、レッジョエミリア・インスチィチュート・ストックホルムの所長G.Greger氏、同機関誌編集長Maria Herngren女史と研究交流を行ったほか、Gunilla Dahlberg女史とも再度面談、日本の実践も紹介しながら、日本とスウェーデンのプロジェクト・アプローチの共通性と差異について意見交換を行った。この交流の中で私たち4人がスウェーデンの実践から触発されたのは、テーマに即した活動を展開しながらその中で一人一人の学びの展開にフォーカスし、記録して確かめ、大人も子ども自身もその学びを共有するプロセスであった。一方日本の場合には子どもの自由感や能動性、活動への意欲が尊重され、ひとクラスの人数が多い中で子ども同士の活動の交流が学びの機会を広げている様子も確認することができた。不足する観点についても多々検討中である。 イギリスでは、Madeley Nursery(Telford)を見学、「虫」のプロジェクトを詳細に観察した。また2日目は Ashmore Park Nurseryの保育を観察、近隣の研究交流している同士の保育学校の、実践の違いを見ることができた。3日目はWoodlands Primary schoolを見学、初等学校の受け入れクラス(5歳)、付設保育学校の3、4歳児クラスの幼小一貫教育を見学することができた。イギリスの場合は、スウェーデンのような保育の体型が単線的でない中で、多様な制度の中でプロジェクト型の幼児教育を実践していた。両地域で多くの分析事例を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な実践のレベルで日欧の幼児教育を比較分析しようとしているので、具体的な観察記録がどうしても必要だった。その点では、1年目にして典型としうる幾つかの記録を(子どもの作品、写真、音声記録などで)入手することができた。今後は、丁寧にこの記録を書き起こし、比較分析することが必要である。 またこの過程で、出版物を入手することや、代表的な理論的リーダーと知り合い、今後の共同研究について語り合う機会も持てた。まず、1年目の成果として今後の強力な土台を確保できたと考えている。 特に、スウェーデンとイギリスの共同研究、「泡」プロジェクトの記録の入手、現在イギリスで進行している「虫」プロジェクトの記録は、プロジェクト活動を理解する上で手がかりを提供してくれるという手応えを持っている。 また2カ国のプロジェクト・アプローチに基づく保育実践を知り得たことで、両者に大きな影響を与えたレッジョ・エミリア.アプローチが持っていた本質的な特徴と、北イタリアの文化として理解すべき要素とを選り分けることも可能になった。スウェーデンとイギリスは、両国で研究交流をしている幼児学校、保育学校同士の実践を観察したので、幼児教育における「学び」をどのように理解しているのか、その重なりと差異について、考察することも可能になったのではないかと考えている。丁寧に資料を整理して、分析に着手したい。
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今後の研究の推進方策 |
(1)日本の幼児教育実践に関しては、今年は文献資料の購入を次年度に遅らせたため、分析が第2年度に持ち越された。すでに研究は数年前から着手はしているのだが、生活単元型のプロジェクト活動と、探究型のプロジェクト・アプローチの比較分析を多くの史資料に基づいて進めたい。 (2)スウェーデンに関しては、スカルプネック教育センターで収集したプロジェクト活動の記録が、今後の分析に最も有効なのではないかと考えている。ただ、スウェーデン語なので、翻訳もは課題が残る。第2年度も引き続き交流活動が進みそうなので、交流の際に良いドキュメンテーション資料の探索を続ける。テーマ型の保育からプロジェクト・アプローチへの実践の転換を詳しくあと付けたい。 (3)イギリスに関しては、短時間の間に効果的に研究交流の対象校を見つけることができた。まずは、その資料の整理と分析にあたる。また、イギリスの新教育の歴史が、どのような文脈を通じて現在の実践に影響し、実践の土台を形成しているかが、今後の大きな研究課題となる。 (4)研究のフィールドとして開拓したいと考えているドイツについては、今年度は予備的な検討までしか進めていない。2年目に現地調査まで進めることができるか慎重に見極めたい。 (5)先ずは調査に赴いた1年目に対して、2年目は部分的に研究をまとめて表現する年としたい。国際、国内の学会に報告の機会を持つ。 (6)生まれ始めた人間的な交流を引き続き発展させる。第一年度はCedepや幼児教育史学会にそれぞれ参加しながら、2団体でGunilla Dahlberg女史の来日講演を成功させ、多くの日本の保育関係者にこの研究の成果の一部を伝えることができた。次年度以降もこうした活動を続ける。
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備考 |
この研究会のために、両幼稚園ではそれぞれ実践記録を英訳している。いずれ、英文の実践記録集として刊行しておきたい。
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