研究課題/領域番号 |
17H02684
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西島 央 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (00311639)
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研究分担者 |
矢野 博之 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40365052)
藤田 武志 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70324019)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 部活動 / 公立中学校 / 管理職対象アンケート調査 / 教諭対象アンケート調査 / 学校規模 |
研究実績の概要 |
本研究は、中学校・高等学校の部活動の適正設置数を、生徒数・教員数等の学校規模と学校の施設・設備状況、地域社会の社会教育状況等から勘案して探ることを目的としている。本年度は、中学校を対象に、管理職及び教諭対象のアンケート調査を実施して、部活動の実状と課題を、とくに学校規模に焦点化して探ってきた。 第一に、前の科研費で前年度末に実施した区市町村教育委員会対象のアンケート調査の分析を通して、自治体が中学校部活動の実態と課題をどこまで把握しているのかを検討した。各校の部活動数や顧問教諭数などを把握している自治体もあったが、教育委員会が主体的・積極的に課題の改善に取り組んでいるとは思えない実状がうかがえた。 第二に、夏休みに、10都県の公立中学校の半数をサンプルとして、管理職対象のアンケート調査を行った。分析からは、①各学校の部活動設置数は、全国平均の整数の学校規模に勘案すると約12部となること、②1部活動あたりの教諭数の平均値である1.88人を境に、実態としての負担状況に違いがみられること、③外部指導者の採用はほとんどが学校の個人的なつてに頼っており、人件費も約半数が支払えていないこと、④部活動数に対して活動場所となる施設が不足している学校が多いことなどがわかった。 第三に、冬休みに、5都県の公立中学校の約4分の1をサンプルに、教諭対象のアンケート調査を行った。分析からは、副顧問となっている教諭の負担感の大きさが明らかになったが、その理由は、社会的に関心をもたれている活動量の多さではなく、希望が考慮されない顧問就任経緯や、担当部活動の種目経験のなさなどであることがわかった。また顧問就任や活動量の増減要求などの圧力が周りの教員や保護者からかかっていることもわかり、教育行政によって取り組まれている部活動の改善策が、負担の軽減よりも増幅につながっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、今年度は、中学校を対象に、管理職調査と教諭調査を実施する計画であったが、そのいずれも順調に実施することができた。 管理職調査においては、学校規模に応じた部活動設置数の実態を把握することができ、これを1つの基準に据えてこれから他に考慮すべき状況を含めて詳しい検討を行っていくためのベースを設定することができた。 教諭調査においては、これまで何度か行ってきた調査の知見や事前に行った教諭対象の聞き取りなどを参考に、部活動指導に係わる負担は、社会で言われているような教員の多忙状況の中心的な要因とは限らないこと、部活動指導の負担は、社会で言われているような活動量によるのではなく、顧問担当経緯や担当種目の経験の有無、部活動関係者との関係等によると考えられることなどの仮説を立てて、調査を行った。その結果、仮説を支持するような結果を得ることができた。 以上の成果をもって次年度予定している調査研究に取り組むことができるので、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり初年度は、計画していた調査研究に取り組むこととそこから仮説を支持する研究成果を得ることができた。 今後も、当初の計画に沿って調査研究に取り組んでいく予定である。具体的には、編成30年度は、これまでの教員対象の調査結果をふまえて、中学生の部活動への関わり方と考え方を探ることを目的に、中学生対象のアンケート調査を行う計画である。また、その翌年度から実施する予定の高校調査に向けて、予備調査として若干の聞き取り調査を予定している。 31年度以降は、公立高校の管理職、教諭、生徒対象の調査を順次行っていく計画である。そして、最終年度には、以上の調査結果を相対化してとらえるために、スポーツ・芸術活動の社会教育化が進んでいるドイツの事例を比較対象として検討するべく、ドイツのスポーツクラブ等のフィールドワークを行う予定である。
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