研究課題
本研究は、多様な言語的・文化的背景をもつ子どもが日本の学校において学びつつある近年の状況を受け、文化的多様性を前提とし活かした教科教材及び指導計画の開発を目的として着手した。研究の基底に置いたのは、言語文化の複層性という観点から学習言語を検討し直し、日本人・外国人双方の子どもの自尊感情と他尊感情を育み、相互理解を醸成しつつ学力の向上を図ること、文化的多様性を「問題」とするのではなく、当事者自身の「権利」であり、当事者を含めた学校や社会にとっての「資源」と位置づけることである。具体的な研究内容の一つは、移民受入れ先進国における教育政策や教材・実践事例の収集・分析であり、主な対象国はアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスである。アメリカについては、多様性をめぐる論点の整理とともに「文化に関連する教育(Culturally Relevant Education:CRE)理論」の検討が行なわれ、本研究の理論枠組につながっている。カナダの共通カリキュラム、イギリス・フランスにおける移民の子どもへの教育政策、ドイツにおける異文化間教育の歴史的経緯について収集資料の考察を行うとともに、具体的な教科に関わって、アメリカの多文化音楽教育におけるCRE理論の導入と課題、ドイツの異文化間音楽教育の経緯が検討され論点がまとめられた。教科教材の開発については、「音楽」「算数/数学」「社会科」のタイプの異なる3教科を対象とした。外国にルーツをもつ児童生徒に対する在籍学級での教科指導の在り方を考える切り口として、「インクルーシブ」の視点から論点整理を試み、「音楽」と「算数」について、外国人と日本人の児童生徒がともに学ぶ授業を想定した具体的な教科教材や指導方法の考察と提案を行なった。「社会科」に関しては、言語的マイノリティの子どもに対する教育についてアメリカの教師教育の取り組みが報告された。
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科学研究費基盤研究(B)17H02699研究報告「文化的多様性を前提とし活かした教科教材の開発―移民受入れ先進国との比較を通して―
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