本研究は、幼小の円滑な接続を実現する言葉の指導方略を提言することを目的とする。これまでの研究は幼小のどちらか一方を取り上げたもの,幼児と児童の交流,指針・要領・指導案、教材の比較などの資料の研究対象としたものが多く,具体的指導に関する取り組みを対象としている研究は少ない。そこで本研究では、教育実践を観察対象とし、幼小の指導の特徴を明らかにすること、その差異や共通性から幼小の指導を連続的なものとするための方略を提言する。調査対象は,あらゆる学習の基盤となり,幼小共にその育成が喫緊の課題となっている言語能力育成の核となる領域と教科,すなわち,幼児教育においては領域「言葉」,小学校においては国語科を選定した。幼児教育においては絵本の読み聞かせ場面、また小学校においてはこれに相当する読みの授業場面を取り上げ、学校教育である幼稚園と小学校における読むことの指導の円滑な接続の方策を、同一教材、長期的な変容、多文化比較の3つの観点から検討した。 幼小教師の指導を、非言語的指導、言語的指導の両面から分析を行った。結果、同一教材(研究1)においては、特に教師の発問と子供からの問いのパターン、また問いの種類に差異と共通性があること、また共同注意のあり方に差異と共通性があることが示唆された。また、多文化比較(研究3)においては、日本・アメリカ・ベルギーの3か国の比較から、日本は幼小の指導の差異が大きいこと、アメリカやベルギーは共通性が多く連続性があることは示唆されるものの、幼児教育における読みの指導事項が日本と比較するとより高度で焦点化した言語指導、読解指導となっていることが窺えた。
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