研究課題/領域番号 |
17H02710
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石黒 広昭 立教大学, 文学部, 教授 (00232281)
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研究分担者 |
宮崎 隆志 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10190761)
舘岡 洋子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (10338759)
渡辺 貴裕 東京学芸大学, 教職大学院, 准教授 (50410444)
内田 祥子 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 講師 (60461696)
川島 裕子 大阪成蹊大学, 教育学部, 講師 (60824068)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際移動児 / パフォーマンスアーツ / リテラシー / 学習 / 発達 |
研究実績の概要 |
本研究では、演劇を中心としたパフォーマンスアーツが言語的文化的に多様な人々を包摂し、その発達を押し上げる学習活動の組織化原理を探究している。さらに日本国内外の海外にルーツがある言語的文化的多様性をもつ日系の子どもに対する学習支援実践コミュニティと連携して、パフォーマンスアーツを取り入れた発達支援プログラムを構築することを目指している。この目的に向けて、理論的検討と各学習支援実践コミュニティとの協働研究を進めてきた。地域コミュニティとの協働研究としては、昨年度開始された群馬県にある、南米にルーツがある日系幼児施設において、遊びの放課後プログラム開発のための「多文化プレイショップ」を定期的に実施することができた。この活動では、大学生が主体的にプログラムを作成、実施することによって、異なる文化に対する感受性の高い教員の育成についても検討をしている。また、特に今年度は、プロの演出家、役者とともにドラマワークショップを実施し、そのプログラムデザインを検討することができた。また、同じく、定期的にワークショップを実施してきた兵庫県の学習支援コミュニティにおいても演劇ワークショップを開催することができ、その課題を確認した。さらに、カナダ・トロントの、継承語としての日本語学習教室でも紙芝居を作るワークショップが実施され、リテラシー学習に寄与するアートプログラムが検討された。タイ・バンコクでも複文化・複言語を生きる日系の子どもたちに対して自らの協働的な捉え直しを促すワークショップが実践された。これらの成果は、日本教育心理学会、異文化間教育学会などの国内学会とWERA(世界教育研究者学会)、EECERA(ヨーロッパ幼児教育学会)、ECER(ヨーロッパ教育研究者学会)など複数の国際学会で報告され、それぞれ有意義なフィードバックを受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パフォーマンスアーツの持つ学習者の発達に対する意義を検討するため、複数のアクションリサーチ型の実践研究を、日本国内外の学習支援組織で実施することができた。また、人間発達を促進するパフォーマンスアーツを中心としたアート活動のあり方を検討するため、プロの実践者(美術家、演劇家)とともに、プログラム開発のための実践研究を行うこともできた。こうした実践研究は、自分たちの実践研究を外側から相対化する上で有用であった。これによって、アートの教育機能の検討を進めることが可能になったといえる。これらの成果は、定期的に国内外の学会等で報告され、関連領域の研究者から有意義なフィードバックを受けることになり、理論と実践を統合する上で有益であった。特に、カリフォルニア大学バークレー校を中心としたコミュニティ支援のための国際学会である、UCliks国際学会(2020年2月開催)では、本科研において実施された複数のプログラムをまとめて報告することができ、それによって、科研全体のふり返りとコミュニティ支援に対する研究の役割を検討することができた。こうした実践調査に加えて、文献を通した理論的検討も行われ、国内外の学会で報告された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もこれまで同様に理論的検討と現場におけるアクションリサーチ型の実践調査を重ねていく予定である。これまで同様に、演劇領域だけでなく、Artsーbased research、さらにはArts-based educational researchと呼ばれるより大きな理論的な括りの中で、パフォーマンスや学習を捉えていくことになる。つまり、本プロジェクトで取り扱う表現活動は狭義の演劇活動を越えて、学習者の生の捉え直しにもつながる再媒介活動ということができる。こうした方向性をより理論化し、かつ、実践プログラムに具体化するために、次年度はSocially Engaged Artsの実践者、研究者とワークショップ等の交流を実施する予定である。併せて、プロの演出家、役者、美術家の持つノウハウをワークショップやインタビューを通して分析することで、より実践性の高い効果的なプログラムの開発資源とする。ただし、2020年度は、新型コロナの影響により、オフラインでの対面型のワークショップや会議が難しいことも予想されている。そのためオンラインでそれらを実施試行することはもちろん、オンラインで有効な演劇プログラムやアートプログラムの開発にもトライする予定である。こうした研究において、先進地域となる国外研究者、実践者とのオフラインでの交流も制限を受けることが予想されるが、これに対してもオンライン会議の利用などで、研究交流に支障がないようにしたい。
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