研究課題/領域番号 |
17H02716
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
井上 雅彦 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252819)
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研究分担者 |
岡村 章司 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (00610346)
三田地 真実 星槎大学, 教育実践研究科, 教授 (10209265)
佐藤 美幸 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (30610761)
大久保 賢一 畿央大学, 教育学部, 准教授 (40510269)
小笠原 恵 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90345322)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達障害児 / 行動障害 / SWPBIS / 機能分析 / 機能的アセスメント / 特別支援学校 |
研究実績の概要 |
本研究では強度行動障害のある児童生徒が多く在籍する知的障害特別支援学校を対象とし、米国を中心に研究されているスクールワイド(学校単位)の行動支援モデルであるSWPBISモデルを参考に、我が国の教育制度で実現するための要因を分析・マニュアル化し、3年目からの実装研究と組み合わせ、知的障害特別支援学校 における行動障害支援システムを開発することを目標とする。初年度の研究として、アセスメントツールと教員研修プログラムに関する調査を行った。SWPBISに関するアセスメントとして、三層モデルの第Ⅰ層から、第Ⅱ層、第Ⅲ層全てを網羅している層別PBIS忠実実行度全体調査(TIF Tiered Fidelity Inventory)があり、研修プログラムとしては公開されているBlue print for School-wide Positive Behavior Support Training and Professional Development(バージョン3)がある。アセスメントシステムとしてTIFの内容を分析するとともに、教員研修に必要とされる内容、進め方、地域や校内の体制整備について整理した。また日本の特別支援学校の独自性について考察を行い、知的障害特別支援学校におけるSWPBISを実現するためのアセスメントシステム、教員研修プログラムの計画について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセスメントツールと教員研修プログラムに関する調査として、特に層別PBIS忠実実行度全体調査(TIF)と研修プログラムとしてBlue print for School-wide Positive Behavior Support Training and Professional Development(バージョン3)に注目して、内容を分析することができた。また、SWPBISは通常学校を想定しているシステムのため、日本の特別支援学校の特徴を整理し、改良点を整理することで、次年度に向けてのアセスメントと研修プログラム開発の基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
SWPBiSの実施に関連すると考えられる幼稚園、小学校、中学校、高等学校と知的障害特別支援学校との差異について検討した結果、知的障害特別支援学校は、1)コミュニケーションに支援が必要な児童生徒が多い、2)同年齢集団内における様々な能力の個人差が大きくより多様である(同年齢であっても、目標や教育課程が異なっている可能性がある)、3)児童生徒1名あたりの教職員の数が多い、などの違いがある。 SWPBISは3層の支援モデルを想定しており、特に第1層支援は全ての児童生徒に対して期待する行動を教示し、それを実際に練習して、その行動の生起に対して正の強化を随伴させることが手続きの本質であり、そのプロセスにおいては、言語を介在させた相互作用が多くを占める。例えば、期待する行動が何であるのか、その行動がなぜ期待されるのかについては通常教師から音声言語によって説明がなされ、各場面ごとの期待する行動をリスト化する「行動目標マトリックス」は通常文字で示され校内に掲示される。また、実際に行動の練習を行う際も教師は音声言語による教示を多く用いていると考えられ、期待する行動を強化する際にも言語による社会的賞賛を多く用いていると考えられる。 知的障害特別支援学校に在籍する児童生徒の言語スキルには制限がある場合が多いと考えられることから、米国で普及しているオーソドックスなSWPBISを特別支援学校の実態に合わせ改変することが必要であると考えられる。具体的には従来の画一的な1層支援を単独で実施するのではなく、第1層支援と第2層支援を合わせた支援をPrimary Interventionとして実施し、その上で一定の行動問題を示し続ける児童生徒に対して機能的アセスメントに基づく個別的な支援を実施するという2層モデルを想定し進めていく必要がある。
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