研究実績の概要 |
表面プラズモンが関与する新規光現象について、以下の成果が得られた。(1)超高感度ラマン分光により、これまで不明瞭にしか報告されていなかったグアニンとシトシンのpHに依存する3つの異なる吸着状態を金ナノ粒子表面で見出した。ゼータ電位測定、近接臨界濃度測定や量子化学計算に基づき、pHや濃度に依存してプロトン付加状態や配向性が変化することなど詳細な吸着構造を明らかにした。(2)光反応について、新たにp-ハロゲン化チオフェノール(p-XTP)のうち、塩素(X=Cl)は光反応しないが、ヨウ素(X=I), 臭素(X=Br)が、溶媒の水分子の水素に置換されることが、高感度ラマン及び重水中の測定で判明した。これは用いたレーザ光強度での温度上昇が10度以下であり、その程度の温度上昇では熱反応は起きないことから、ホットキャリアを介して起きる光反応である。(3)銀ナノ構造体の水溶液中での微弱レーザ光によるエッチング現象について、そのメカニズムが、銀イオンの光還元と、その後のプラズモン励起と緩和で生成するホットキャリアによる銀イオンの生成とその水溶液中への溶解・拡散、及びホットエレクトロンの銀薄膜中の拡散後の銀イオンとの再結合によることが、種々の溶液組成での光学イメージ、SEMイメージ、EDX分析などに基づいて明らかになった。(4)シリコン基板上の金ナノ粒子(AuNP)分散液への微弱レーザ光照射により、酸性条件でAuNPの光引力が生じ(AuNPが非会r照射領域に集積)、塩基性条件では光斥力が働くことが見出された(照射領域からAuNPが排除される)。DLVO理論に基づく表面間力計算とFDTD計算に基づいて、この結果が合理的に説明できることが判明した。
|