研究課題/領域番号 |
17H02731
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
湯川 博 名古屋大学, 工学研究科, 特任准教授 (30634646)
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研究分担者 |
佐藤 和秀 名古屋大学, 高等研究院(医), 特任助教 (20788658)
新岡 宏彦 大阪大学, データビリティフロンティア機構, 特任准教授(常勤) (70552074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NIR-II蛍光ナノ粒子 / 幹細胞 / イメージング |
研究実績の概要 |
再生医療における幹細胞移植治療の有効性は、移植後の細胞の疾患組織・臓器への生着効率に大きく依存している。しかし、最近、患者の疾患・炎症状態が、移植幹細胞の生体内挙動や炎症組織・臓器への生着効率に大きく影響を及ぼすことが懸念されてきており、その機構もほとんど明らかになっていないのが現状である。そのため、幹細胞移植治療の更なる発展には、詳細な移植幹細胞の生体内挙動に加え、疾患・炎症状態にある組織・臓器への生着効率について正確な診断が可能で、且つ、生着機構を明らかにできるイメージング診断技術の創製が不可欠となっている。本年度は、幹細胞ラベリングに極めて有効であり、NIR-II蛍光ナノ粒子のがん細胞へのラベリングが認められているカチオン性リポソームや膜透過性ペプチド等を用いて、これら分子をNIR-II蛍光ナノ粒子表面に静電的に被覆させる方法により、NIR-II蛍光ナノ粒子の幹細胞ラベリングについて検討することができた。また、ラベリング特性として、ラベリング期間や機構についてNIR-II蛍光を検知できる共焦点顕微鏡を用いて、確認を進めることができた。更に、並行してマウスを用いて、肝炎症状態において重要な働きをする免疫担当細胞の一つである肝臓内マクロファージ(クッパー細胞)について、肝臓内に存在する生きたままの細胞を観察することが可能である高速多光子共焦点レーザー顕微鏡(A1RPM:Nikon、設置済み)を用いて、リアルタイムに詳細に観察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、「NIR-II蛍光ナノ粒子による幹細胞ラベリング手法の構築」の課題を中心に進める予定であったが、「幹細胞への高効率ラベリング手法の開発」と「ラベリング特性評価」について、瑕疵なく研究を遂行し、量子ドット等を中心としたNIR-II蛍光ナノ粒子の有効性を示すことができた。ただ、最適化はできておらず、次年度の課題とする。一方、30年度以降に実施を予定していた、肝炎症状態において重要な働きをする免疫担当細胞の一つである肝臓内マクロファージ(クッパー細胞)について、肝臓内に存在する生きたままの細胞を観察することが可能である高速多光子共焦点レーザー顕微鏡(A1RPM:Nikon、設置済み)を用いて、リアルタイムに詳細に観察することができた。本成果は前倒しで計画以上に進捗出来ており、全体的に概ね順調に進展できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ラベル化幹細胞の機能評価について、「幹細胞特異性への影響評価」と「NIR-II蛍光ナノ粒子ラベリングによる幹細胞の炎症性評価」の課題について取り組んでいく心算である。具体的には、NIR-II蛍光ナノ粒子のラベル化に伴う幹細胞機能への影響として、幹細胞特異性(自己増殖能、多分化能)について評価する。特に、多分化能については、疾患組織・臓器を構成する細胞(今回は肝実質細胞)への分化能を保持しているかについて、遺伝子レベルで詳細に評価する。また、NIR-II蛍光ナノ粒子ラベリングによって幹細胞自身の炎症が惹起されないことを確認するために、ラベル化幹細胞の炎症性サイトカイン産生量(TNF-α、IL-1、IL-6、IFN-γ、IL-12など)をELISA等で評価する。加えて、再生因子産生量(HGF、FGF、EGFなど)、及び、組織・臓器への生着の際に重要となる表面タンパク質の発現量(インテグリン、カドヘリンなど)についても詳細に検証する。更に、急性、劇症、慢性肝炎モデルマウスの作製と炎症状態の確認についても、検討を進めていく予定である。
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