研究課題
当該年度は、探針先端部にのみ導電性をもつAFMプローブを作製し、探針先端部以外の箇所に寄与する静電的相互作用を抑制できるかどうか調べた。まず、以下のような探針先端部のみ導電性をもつAFMプローブの作製手順を確立した。最初に、カンチレバー/探針全体にAuコートが施された市販のプローブの全面に、高周波スパッタリング装置を用いて、絶縁物(SiO2)を約100 nmコートした。次に、そのプローブと導電性試料(アルミ板)を電気的に接触させた状態で、コンタクトモードAFMを用いて探針先端のSiO2を除去した。SiO2が除去されたかどうかは、探針-試料間に流れる電流値をモニターすることで確認した。これにより、先端部にのみ導電性をもつAFMプローブを作製した。この探針を用いて静電気力検出の性能評価を行った。比較用プローブも含めて、(1)市販のAuコートプローブ、(2)それにSiO2;をコートしたプローブ、(3)探針先端のSiO2を除去したプローブを用い、1 mM KCl水溶液中で探針-試料間に周波数fmの交流電圧を印加することで探針-試料間に生じる静電気力のfm成分(A1)をロックインアンプで検出し、そのfm依存性と距離依存性を調べた。fm依存性からは表面張力を示す成分が、特に低周波数側において、プローブ(2)と(3)で抑制されていることが分かった。距離依存性を見ると、プローブ(1)と(3)では、探針が試料に接触する直前でA1が増大するのに対し、プローブ(2)ではその様子が見られなかった。これらのことから、探針先端部のみに導電性を有するプローブが、絶縁膜によってカンチレバーの表面張力由来の不要な成分を抑制しつつ、探針先端部の静電的相互作用力を検出できる性能を有している可能性を示せた。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、当初の計画通り、先端部にのみ導電性を有するAFMプローブの作製手順を確立でき、そのプローブの評価を行うことで、液中電位計測の定量測定に有効性の一端を示すことができた。また、次年度実施予定の静電的相互作用力を支配的に検出できる可能性を有するヘテロダイン法に必要な周辺装置の準備も済ませており、次年度の研究も速やかに開始できる状態にある。
引き続き、作製したプローブを用いて、探針-試料間距離依存性の理論との比較や、実際のイメージングを行い、その性能を詳細に検討する。また、ヘテロダイン法による静電気力の支配的検出の可否についても検討する。さらに、空間・電位分解能を向上するイメージング技術に必要なソフトウェアの作製・導入も行う。
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