研究実績の概要 |
本研究では、特異な構造と電子的特性を有するナノカーボンである単層カーボンナノチューブに着目し、選択的な化学修飾によって近赤外発光特性を制御する方法を構築することを目的とした。具体的には、反応活性点を1つあるいは2つもつ反応試薬や段階的に立体構造を大きくした反応試薬を設計して、これを用いてカーボンナノチューブ付加体を合成した。このように、付加体の反応点の数や反応点を結ぶスペーサーの鎖長や嵩高さを制御することで、SWNTsの化学修飾率や付加様式を制御することを試みた。最近、これら化学修飾に用いる反応試薬の設計によって、(6,5) SWNTsの化学修飾率の制御が可能であることや、化学修飾することによって1100 nmから1268 nmの範囲で複数もしくは単一の新しい近赤外発光を発現させることに成功した。 バルクスケールで合成されるSWNTsは、構造の異なるSWNTs混合物として得られることから、混合物として化学反応性や化学修飾後の分光学的評価をすることになる。そこで、化学修飾したSWNTsをゲルクロマトグラフィーで分離精製することを試みたところ、(6,5) SWNTsおよびその付加体の高純度化と光学分割に成功した。高純度化によって濃度消光を低減させることができ、より優れた近赤外発光材料として活用できることが明らかとなった。また、(6,5) SWNTsの発光制御に有効性が認められた2点修飾に適した化学反応が、(6,4) SWNTsの発光特性制御にも活用できることを明らかにした。
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