研究課題
p型半導体としてPbSQDs、n型半導体として一次元的な構造を有するZnOナノワイヤ(ZnO NWs:ZnO Nanowires)電極を用いて、ヘテロ接合型量子ドット太陽電池デバイスの作製方法を確立した。PbS QDs/ZnO界面にSnO2パッシベーションを行い、ヘテロ接合太陽電池における光電変換特性の変化について検討した。ZnO NWs電極におけるフォトルミネッセンスのスペクトルから、酸素空孔由来と考えられる深い準位の欠陥による発光が2.0-2.4 eVで観測された。SnO2パッシベーションを施すことで、深い準位の欠陥による発光が抑制されることが判明した。また、SnO2界面パッシベーションによって短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、曲線因子FFが向上し、光電変換効率は1.4倍に増加したことが分かった。これは、NWs電極における伝導帯最下端の上昇に伴う擬フェルミ準位の上昇と深い準位の欠陥が減少したことによる欠陥を介した再結合の抑制が要因の一つとして推測される。これらの結果より、PbSQDs/ZnO NWsヘテロ接合太陽電池におけるSnO2界面パッシベーションが、光電変換効率の向上に有用であることが分かった。また、異なる粒径におけるPbS量子ドットの吸収スペクトルから、量子ドットにおける欠陥量、結晶性などを反映するアーバックエネルギー(Eu)を算出することで、粒径変化によるEu値が開放電圧損失に与える影響を検討した。その結果、粒径増加によりEu値は70meVから25 meVまで減少することが判明した。FTO/ZnO NW/PbS-QD薄膜を電池化した際の光電変換特性から開放電圧損失を算出した結果、粒径が増加するほど1.30 eVから0.80 eVまで損失が減少しており、薄膜の結晶性が良いほど開放電圧の損失が小さくなることが一つの可能性として示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
当初では、H29年度に(1)「ヘテロ接合量子ドット太陽電池の作製法の確立」;(2)「ヘテロ接合量子ドット太陽電池の各界面制御方法の確立」という内容を計画していた。計画したとおりに、上記の内容はすべて順調に研究することができた。さらに、PbS QDs/ZnO NWsヘテロ接合太陽電池におけるSnO2界面パッシベーション方法を提案し、SnO2界面パッシベーションによる光電変換効率の向上が実現できた。
1.量子ドット薄膜における単一励起子と多重励起子の緩和ダイナミクスの解明(1) 表面にオレイン酸(OA)が配位しているPbS 量子ドット溶液を用いて、スピンコート法により配位子置換および成膜をガラス基板上で行う。用いた配位子は分子長が異なるものを用いる。これらの配位子を量子ドット表面に置換し、量子ドット間距離が異なる量子ドット膜を作製する。またTransmission Electron Microscope(TEM)測定より、それぞれ平均量子ドット間距離dを評価する。 (2)過渡吸収法(TA)を用いて、励起光強度と波長及びプローブ光波長を変えることにより、量子ドット薄膜における単一励起子と多重励起子の緩和ダイナミクスを評価する。単一励起子と多重励起子の電荷分離速度定数を測定し、量子ドット間の距離との相関を見つける。これらの結果を用いて、多重励起子の電荷分離の効率と条件を見出す。2.ヘテロ接合量子ドット太陽電池の各界面の制御と太陽電池特性との相関3.量子ドット太陽電池の各界面における電荷分離と再結合ダイナミクスの解明フェムト秒の過渡吸収法(fs-TA)を用いて、サブピコ秒からナノ秒までの時間領域で起こる多重励起子生成の発現と緩和過程とナノヘテロ界面での電荷分離プロセスを解明する。ナノ秒のTA(ns-TA)法を用いて、数100ナノ秒から数100ミリ秒の時間領域にてナノヘテロ界面で起こる電荷再結合過程を解明する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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