コロイド量子ドット(CQD)の膜におけるQD表面パッシベーションは膜の各種物性、特にQD間での単一励起子と多重励起子の電荷分離、および量子ドット太陽電池の光電変換特性に大きい影響を与えることが予想できる。本年度では、PbS QD表面パッシベーションに4種類のヨウ化物塩、すなわち酸性度が高いヨウ化メチルアンモニウム(MAI)とヨウ化アンモニウム(NH4I)と酸性度が低いヨウ化テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)と1-エチル3メチルイミダゾリウム=ヨージド(EMII) を適用した。これらのヨウ化物塩の酸性度の違いによる各種特性の変化とそのメカニズムについて研究した。PbS CQD太陽電池の光電変換特性の評価、過渡吸収(TA)法とマイクロ波光伝導測定法(μ-PCD)法によるPbS CQDs膜の光励起キャリアダイナミクスの評価、光音響法(PAS)による光吸収スペクトルの測定、そしてXPSによるPbS CQDs表面の元素分析を行った。まず、酸性度が高いヨウ化物塩で処理したPbS QDs膜ほど、電荷分離確率が減少することが分かった。次に、MAI及びNH4Iで処理したCQD膜におけるキャリア寿命時間はEMII及びTBAIで処理したCQD膜のキャリア寿命時間の1/3倍程度になった。有効キャリア寿命の値の減少は再結合確率の増加を示すものである。また、塩の酸性度の高いほど、PbS QDs膜のアーバックエネルギーは高くなったことからも高酸性度のヨウ化物塩はPbS CQDs薄膜に欠陥の形成が示唆される。さらに、酸性度が高いヨウ化物塩のデバイスの光電変換効率は酸性度が低いものの光電変換効率と比較して、変換効率が4%程低くなった。これらの原因としては、酸性度の高い陽子を持つMAI及びNH4Iで配位子置換を際にPbS CQDs 表面のPb原子が量子ドット表面から除去されたことが考えられる。
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