研究課題/領域番号 |
17H02738
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松 直樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30253008)
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研究分担者 |
鈴木 実 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (00319724)
石川 善恵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20509129)
天野 創 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20613467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬物送達 / がん光線力学療法 / 六方晶窒化ホウ素 / 光増感剤 / ナノ製剤 |
研究実績の概要 |
報告者らは、グラフェンにがん光線力学療法 (PDT) の光増感剤であるchlorin e6 (Ce6) を担持した複合体G-Ce6を簡便に作成することに成功し、PDTによるがん細胞の死滅を確認した (N. Komatsu, ACS Appl. Mater. Interfaces, 7, 23402 (2015))。2017年度の研究では、まず、上記のグラフェンを六方晶窒化ホウ素(h-BN)のナノシート (BNNS)に換え、これらの複合体BNNS-Ce6を作成した。具体的には、バルクのh-BNをCe6の存在下、水中で超音波を照射し、遠心機で多層のh-BNを除き、BNNS-Ce6を含む上澄み液を得た。BNNS-Ce6のCe6担持率は、220%と見積もられ、これはG-Ce6におけるCe6担持率160%を凌駕することが明らかとなった。さらに、660 nm の光照射下において、Ce6のみでは全く細胞毒性が見られなかったのに対し、BNNS-Ce6では0.20 mg mL-1という非常に低濃度のCe6で>95%のがん細胞を殺傷できることが明らかとなった。 さらに、グラフェン、BNNSとならぶ2次元材料である二硫化モリブデン(MoS2)ナノシート(MoS2 NS)にCe6を担持した複合体MoS2-Ce6も合成し、がん細胞に対する毒性評価を行った。この場合、Ce6担持率は120%とG-Ce6, BNNS-Ce6に比べて低かったものの、660 nm の光照射下において、0.050 mg mL-1とG-Ce6, BNNS-Ce6より低濃度で>95%のがん細胞を殺傷できることがわかった。これは、MoS2 NSの光吸収が660 nm付近に存在することから、このエネルギーが熱に変換され、がん光温熱療法(PTT)の製剤としてMoS2 NSが機能しているためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BNNS-Ce6を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を行うまでには至らなかったものの、ごく少量のBNNS-Ce6のPDTによるがん細胞の殺傷を確認することができた。本研究では、BNCTと薬物送達(DDS)の両機能を併せ持つがん治療を目指しており、一年目の成果としては、まずまずと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
京大熊取にある原子炉実験施設において、上述のBNNS-Ce6をがん細胞の培養液中に加えたのち、中性子線の照射実験を行い、BNCT-PDTの複合がん治療の可能性について検討する。一方、h-BNをポリグリセロール (PG) により修飾することで、BNNS-PGを合成し、これに蛍光体である Cy7 を担持することにより、BNNS-PG-Cy7へと誘導し、がんへの集積を担がんマウスを用いた in vivo イメージングにより確認する。
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