研究実績の概要 |
前年度は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に適用可能なホウ素原子を含む二次元ナノ粒子である六方晶窒化ホウ素(h-BN)のナノシート (BNNS) に光増感剤であるchlorin e6 (Ce6) を担持した複合体(BNNS-Ce6)を合成し、その水分散性を確認したのち、光照射下でのがん細胞に対する高い殺傷能力を確認した。 2018年度は、まず、h-BNをポリグリセロール (PG) により修飾することで、BNNS-PGを合成し、これに蛍光体である Cy7 を担持することにより、BNNS-PG-Cy7へと誘導した。報告者らはナノダイヤモンド、磁性酸化鉄ナノ粒子など各種ナノ粒子のPG修飾とその生物医療応用に関する報告を行ってきた(例えばL. Zhao, N. Komatsu, X. Chen, et al., Adv. Funct. Mater., 24, 5348 (2014); L. Zhao, N. Komatsu, et al., Adv. Funct. Mater., 22, 5107 (2012))。今回、同様の方法論をh-BNに適用することにより、h-BNから1段階でBNNS-PGを合成することに成功した。また、得られたBNNS-PGは、2.0 mg/mLの水分散性を示した。さらに、BNNS-PGにペプチド(octalysine: Lys8)を結合させた後、イオン結合によりインドシアニングリーン(ICG)を担持した。得られたBNNS-PG- Lys8-ICGを担がんマウスの尾静脈に注射し、in vivo 蛍光イメージングを行ったところ、1時間後、肝臓と腸から最も強い蛍光が見られたものの、腫瘍からも蛍光が検出された。しかしながら、今後、ホウ素製剤の腫瘍への選択性をさらに高めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ごく最近、蛍光剤である Cy7 で修飾した ND-PG(ND-PG-Cy7)を合成し、それを用いて担がんマウスのin vivo 蛍光イメージングを行ったところ、腫瘍への集積に高い選択性が認められた(F. Yoshino, L. Zhao, N. Komatsu, et al., submitted)。したがって、今年度は、BNNSPG-Cy7を新たに合成し、担がんマウスのin vivo 蛍光イメージングによりがんへの高い集積能を確認したのち、熊取にて、担がんマウスを用いたBNCTを行う。さらに、GdBO3 ナノロッドを合成した Li Zhao准教授(蘇州大学)を招聘して熊取にて中性子照射実験を共同で行う予定である。
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