研究課題
本研究は、高効率蛍光集光デバイスである「ナノ光ファイバ」にプラズモニック構造を形成する事で、水溶液中でも高い蛍光集光効率を実現し、化学分析デバイスとしての応用を開拓するものである。大きな電場増強効果と光導波路との高い入出力効率を有する金ナノチップ構造をナノ光ファイバ先端に形成する。チップ先端を近接させる事で一分子からの蛍光を効率的に光ファイバに結合させるため高効率で蛍光集光が可能である。これを試料溶液などに挿入すれば、微弱蛍光やラマン散乱を容易かつ高感度に測定可能な化学分析デバイスとして利用できる。H29年度は現有のナノ光ファイバ作製装置を改造して、加熱領域が延伸中に変化させられるようにした。具体的には、酸水素バーナーがファイバ軸方向に動いて加熱領域が延伸中に変化させられる加熱システムを構築した。このシステムはLabViewによりモーション制御している。延伸中に自在に加熱領域を制御できるシステムを実現する事に成功した。火炎点火を行い安定した火炎を形成する事もでき、ナノ光ファイバの延伸にも成功した。ナノ光ファイバの設計面では、液中でも総発光量の10%程度がシングルモードファイバの導波モードに結合する事が明らかとなった。特に分子の遷移双極子がナノファイバの動径方向を向くときのみ有為な蛍光結合がある事を見出した。結合効率が10%程度に留まる理由はファイバ材質のガラスと水の屈折率差が非常に小さいためである。今後、プラズモンとの結合を実現する事でより高効率を達成可能と考えている。また、プラズモンと分子の結合を観測していくために微弱光検出が必要であり、そのために超高感度カメラ検出器(EMCCDカメラ)を導入した。金ナノ粒子の表面局在プラズモンの散乱も観測できており、次年度以降にナノ光ファイバと結合した金ナノ構造と蛍光分子の結合を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度目標とした、現有のナノ光ファイバ作製装置の改造を完了した。これにより液中でも高い透過率を維持可能な形状を作製する事ができる。作製パラメータの最適化が今後必要である。また、最適形状のシミュレーションに関しても、導波路解析とFDTD計算を組み合わせる手法を見出し、大方の最適形状が明らかとなりつつある。
引き続き、液中での利用に最適化されたナノ光ファイバの形状プロファイル実現のための作製パラメータ決定を行う。次年度は導波路解析とFDTD数値計算の組み合わせを深化させて、トータルな光検出効率のシミュレーションにも取り組む。また、最初の測定対象として液中の蛍光ナノダイヤモンド粒子をナノ光ファイバで検出できるような実験系の構築に取り組む。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件)
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