研究課題
CNTは堅牢な構造を持っているため、生体内で分解されにくく、実用化する際に安全上の懸念が非常に大きい。本研究では、申請者が開発した近赤外光吸収法を改良し、細胞内と生体組織内のCNT量の測定方法を確定し、免疫細胞と実験動物を用いてCNTの生分解性能を定量的に評価する。平成29年度は本研究計画した通り進展し、目標とした成果が得られた。1)酵素(MPO)によるCNTの生分解性の解明好中球由来酵素(MPO)を用いて、単層と多層CNTの分解率を調べた。まずは酸化処理した分散剤なしのCNT水分散液を作製した。CNTの分散液に酵素MPOと微量の過酸化水素水を添加し、37℃で1-3日間反応させた。 光吸収測定により、CNTの量の経時変化を測定した。その結果、単層CNTは24時間で約50%が減少、多層CNTは約10%が減少したことが分かった。 また、異なった分散剤(BSAやPEGなど)で分散したCNTにも調べたが、CNTの表面に付着している分散剤が酵素の作用を阻害し、分解率が低くなったことが分かった。2)免疫細胞内CNTの生分解性の解明まず、申請者らが開発したCNHの細胞取り込み量の測定方法である近赤外光吸収法を再検討し、CNTの細胞内取り込み量の測定方法を確定した。この測定方法を国際標準化機構ISO/TC229に提案し、NWIPとして登録された。次に、免疫細胞(Raw264.7、THP-1)と初代細胞(マウスのKupffer細胞)を用いて、CNT/BSAを細胞に取り込ませて、光吸収測定法を用いて細胞内のCNTの量の経時的な変化を測定した。免疫細胞内CNTの量の経時変化から、CNTが生分解されることを定量的に確認できた。また、CNTを取り込んだ細胞の生存率や、活性酸素の発生量についても経時的に測定した。その結果、CNTが生分解されることで、細胞への毒性が低下する可能性があることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度は本研究計画した通り進展し、目標とした成果が得られた。この成果は、2017年9月に、FNTG学会および産総研プレスリリースの発表を行った。また、本研究開発したCNTの細胞内取り込み量の測定方法を国際標準化機構ISO/TC229に提案し、NWIPとして登録された。
今までの研究は順調に進んでいるため、今後も計画通り研究を進めて行く予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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