研究課題
CNTは堅牢な構造を持っているため、生体内で分解されにくく、実用化する際に安全上の懸念が非常に大きい。本研究では、近赤外光吸収法を用い、細胞内と生体組織内のCNT量の測定方法を開発し、免疫細胞と実験動物を用いてCNTの生分解性能を定量的に評価する。平成30年度は本研究計画した通り進展し、生体組織内CNT量の測定手法を確定するとした目標を実現した。今まで、生体内CNTの分布を調べるため、金属や放射性物質を用いてCNTをラベル化する方法を利用しできた。しかし、金属内包などのプロセスがCNTの表面性質などを変化させるため、元のCNTと異なる生分解特性を持つ可能性がある。本研究はCNTが近赤外光を吸収する特性を利用し、組織内CNTの定量測定方法を開発した。測定プロセスとして、まず、分散液のCNT濃度と近赤外光(700-900nm)の吸光度の検量線を作製する。次に、CNT/BSA 分散液を静脈注射によりマウス体内各組織に集積させ、24時間後に各組織(肝臓、肺および脾臓など)を取り出し、組織の溶解液を作製する。最後に検量線に基づいて、CNTを含む組織の溶解液の近赤外光の吸光度からCNTの量を計算する。特に、光吸収測定方法では、測定結果に大きく影響されているCNTを含む組織を均一に溶解する条件を調べ、最適なタンパク質分解剤と界面活性剤の組み合わせを選定し、37℃(2時間)と70℃(2時間)2段階で加熱と最後の超音波処理条件を確定した。また、本測定方法の測定正確性を確認するため、金属(Gd)内包したカーボンナノホーン(CNH)を用い、金属測定するICP法と本開発した光吸収方法により測定した結果を比較し、本測定方法の有効性を確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成30年度は本研究計画した通り進展し、目標とした成果が得られた。この成果は、2019年3月に、国内&国際学会発表と国際雑誌で5本論文が掲載された。また、本研究開発したCNTの細胞内取り込み量の測定方法関する国際標準化ドキュメントは、2018年5月中旬と2018年11月中旬で、ISO/TC229・WG3の国際会議で2回審議を行い、順調に進んでいる。
今までの研究は順調に進んでいるため、今後も計画通り研究を進めて行く予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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