研究課題
本年度は、開発しているその場観察技術を用いた応用研究で成果が出た。液中その場観察用の試料ホルダについては、液体をフローしながら観察ができるように改良を実施した。内径150μmのPEEK製チューブを2本、試料ホルダ内に設置し、ホルダ先端の試料搭載部まで液体を導入出できる機構とした。先端部は従来と同様にSiN製の隔膜が窓孔となっているMEMS製チップが2枚搭載可能であり、両MEMSチップ間に試料を挟み、その間隙を上記チューブから導入された液体が流れる機構となっている。それを用いて、金属材料の液中その場観察を実施し、金属の溶解および析出過程の観察に成功した。特に異種金属の生成を確認などの新しい知見を得ている。ただし、電子ビーム照射が反応に影響を及ぼすことも明らかになっており、メカニズム解明には照射電信線の低ドーズ化が鍵となることが明らかになった。また、開発技術の生体試料への展開を検討しており、グラフェン膜2枚により細菌を内包した液体(培養液)のパッキング技術を開発した。、大腸菌の電子顕微鏡挙動観察への可能性を見出すことに成功した。一方で装置開発では、照射電子ビームの変調機構の開発が難しいことが概念設計から明らかとなってきた。単純な直流電圧印加による電子ビームの場合、300kVで加速された電子ビーム軌道を曲げて試料に届かなくする(照射ビームOFF状態)ためには、数kVを平行平板に印加する必要があり、それを高周波変調するためには電源・制御機構などの設計・開発を要する。このため、RFチョッパーの導入など他の方法を用いることも視野に検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
オペランド観察技術の開発は順調に進捗しており、応用成果も着実に出ている。一方で装置開発では、平行平板電極を用いた照射電子ビームの変調機構の開発が難しいことが概念設計から明らかとなってきた。このため、他の手法の導入検討が必要であると考えている。
最終年度と言うこともあり、基本的には応用研究を中心に成果を出すことを想定している。具体的には、液中その場観察技術を用いた、金属材料、生体試料の挙動観察であり、特に後者において、細菌の生きた状態でのベシクル生成などの生命活動を動的に捉えることを目指す予定である。
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