本研究では、電子顕微鏡その場観察において、これまで原理的に避けられなかった電子線照射の影響を除去し、反応現象そのものによって起こる純粋な変化・挙動を直接に観察できる“能動変調型・環境電子顕微鏡”を新規開発し、かつ、それを用いてガス雰囲気下での貴金属ナノ粒子触媒の原子レベル反応場の直視定量解析や、リチウムイオン電池、燃料電池など電解液中での電池反応の定量的な現象解析を行い、反応メカニズムを解明することを目指した。 本年度は、照射電子ビームの変調機構の技術検討を行い、単純な直流電圧印加による電子ビームの場合、300kVで加速された電子ビーム軌道を曲げて試料に届かなくする(照射ビームOFF状態)ためには、数kVを平行平板に印加する必要があり、それを高周波変調するためには電源・制御機構などの大幅な開発が必要であることが明らかとなった。 また、開発技術の生体試料オペランド観察への展開については、グラフェン膜2枚により細菌を内包した液体(培養液)のパッキング観察を試みた。その際、電子ビーム照射が生命活動に影響を及ぼすことも明らかになっており、その場観察には照射電信線の低ドーズ化が鍵となることが明らかになった。
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