(1)作製した電場印加試料ホルダーの電場印加時における過渡現象について検討した。実測の端子間抵抗(約40 MΩ)と静電容量推定値(数pF)を用いると、回路の時定数は100マイクロ秒のオーダーとなった。用いた直流安定化電源の定電圧過渡応答は50マイクロ秒である(カタログ値)。一方、観察に用いた電子直接検出型CMOSカメラの時間分解能は2.5msである。したがってカメラの時間分解能の範囲では、強誘電体ドメイン構造は印加された電場に対して瞬時に応答しているとみなせることが判明した。 (2)イオンミリングにより薄片化したPMN-PTの化学組成をTEM-EDSにより分析した結果、PT濃度は28-30at%であり、公称組成(PMN-xPT、x=0.3)と概ね一致することを確認した。STEM-EELSにより観察視野の試料厚さを約1~2 μmと見積もった。 (3)1 MV超高圧電子顕微鏡観察条件下での弾き出し損傷の程度について、McKinley-Feshbachの式を用いて損傷形成速度を見積もった結果、Pbの場合に2.3×10-4 dpa/sとなった。したがって、観察中のはじき出し損傷は無視しうる程度であり、観察されたドメイン構造変化は電場印加に起因することが明らかとなった。 (4)1 kV/mmの電場印加前後で電子回折図形を観察した結果、電場印加による励起条件の変化は無視しうる程度であることが判明した。この結果に基づき、電場印加による像コントラストの変化はドメイン構造変化によるものであると結論した。 (5)微小領域からの電子回折図形を観察するために導入したSTEM Diffraction Imageソフトウェアの動作確認を行い、1 nm以下の領域からの電子回折図形観察を行った。
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