最終年度は、低損傷ナノ加工技術である水素雰囲気異方性熱エッチング(HEATE)法により室温で明瞭に発光する平均直径9nmの極微細InGaN多重量子構造の作製や新規ナノ構造光デバイス基盤技術の実験的検証を行い、本研究で目標とした窒化物半導体極限微細ナノ構造の作製とナノ構造光デバイス基盤技術の開発は想定以上の成果をもって完了した。以下に本年度の具体的な研究実績を記す。 ・InGaN系極限ナノ構造の作製と評価: HEATE法よるGaNエッチングにおいて水素のみで垂直かつ低アンダーカット形状が得られる条件を見出し、室温で明瞭に発光する周期60nm、平均直径9nm、厚さ3nmの高密度極微細InGaN多重量子井戸ナノピラーアレイの作製に成功した。オゾン水酸化とフッ酸緩衝液の交互処理によるナノピラー側面の1nm以下のデジタルエッチングにより更なる微細化が可能であることを検証し、InGaN系高品質極限ナノ構造作製技術を確立した。また、直径9~1000nmのInGaN/GaNナノピラーアレイの光学特性を系統的に評価し、直径100nm以下の領域で表面非発光再結合が支配的になることを見出した。 ・ナノ構造光デバイス基盤技術開発: 一辺長100nm程度の微細三角形ナノホールで構成されるメンブレン状GaNトポロジカルフォトニック結晶を作製し、可視全域に亘るフォトニックバンド制御とGaN系で初の可視域トポロジカルエッジモードの観測に成功した。また、HEATE法によるGaN/空気DBRを有する青紫色レーザの理論解析や構造作製、光励起発振などの検証実験を行って閾値20umA以下の超低閾値ナノレーザ実現の可能性を示した。酸化ガリウムと空気の高アスペクトDBR構造で挟まれたナノ流路に緑色発光ペロブスカイト結晶を選択的に析出させる技術を開発し、集積型波長変換RGB光源デバイスの原理検証に成功した。
|