研究課題/領域番号 |
17H02748
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
渡邊 賢司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (20343840)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 結晶工学 / 格子欠陥 / 半導体超微細化 / 二次元原子層材料 / 六方晶窒化ホウ素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高純度かつ低欠陥な六方晶窒化ホウ素単結晶エピタキシャル膜を成長するために、高圧法により成長した六方晶窒化ホウ素単結晶を保持基板に剥離転写し、これを基板とするホモエピタキシャル技術の開発を行い、理論と実験の相違が著しい六方晶窒化ホウ素の電子励起状態の解明につながる知見を得ると同時に、横方向 (ラテラル) 成長モードの促進による新しい配向性薄膜の大面積成長条件の探索をおこない、二次元原子層材料を用いた新しいデバイス応用の創成のための基礎を形成することである。これまで高温領域でホモエピタキシャル成長が良好に行われることを見出していたが、装置の制限などから成長膜厚が0.5μm程度であるために、結晶性の評価が難しい。共焦点光学系を持つラマン散乱分光装置を用いて、深さ方向のマッピングを試み、高圧法により育成した単結晶よりも結晶性の高い成長膜を得ることに成功しているが、ホモエピタキシャル成長ゆえにその他の評価が難しい。横方向への成長モードを探索する上でも、成長速度の増進は必須である。そこで、ガス濃度等を増加させて成長速度の増進を図ったが、適切なレイヤー成長が起こらず、条件の設定が問題であることがわかった。また、成長層の面内不均一性を測定するために共焦点系ラマン装置にXY方向のマッピング機能を付加するための改造(顕微分光マッピング装置)を行った。この装置にはさらなるステージの改造および調整が必要なので次年度これに取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
成長速度の増進を高温成長条件(1300℃以上)で行うためには、供給ガスの増量と成長中の雰囲気条件の探索が必要であるが、現在のところ最適条件に至っていない。また、高温下での測定のため、試料ホルダおよび加熱機構が損傷を受けるので、定期的なメンテナンスが必要となり、研究時間のロスとなっている。一方、面内方向のラマンマッピングを測定する装置系の改造は、順調に進んでおり、現在シリコンなどの参照試料により装置テストを行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで良質の薄膜を得る目的に重点をおいて成長条件を進めてきた結果、比較的良好な膜質の薄膜結晶が得られるようになってきた。しかし、装置の制限から膜厚が1ミクロンに満たず薄膜成長評価が困難である。そこで昨年度同様に結晶成長条件を見直し、厚膜成長条件を探索する。成長速度を増大させる上で着目すべき点は供給ガスの増量と成長温度の最適化である。供給ガスの増量は成長中の雰囲気条件を変えてしまうので、新たな成長条件の調整が必要になる。サファイア基板や高圧法による単結晶貼付け基板などを用いて条件の最適化を行う。また、本年度は成長速度の増大を図ると同時に、ラテラル成長モードの促進を図るためにホモエピタキシャル基板を原子層レベルの薄膜としてとそれを搭載する保持基板の境界領域における成長状態の観察をおこなう。メンテナンス時間を最小にするために、試料ホルダおよび加熱機構のコンポーネント化を行い、ロス時間最小でメンテナンスを進められるようにする。テスト中のラマンマッピング装置を成長基板に適用するために調整を行い、面内分布の評価をおこなう。
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