研究課題
医薬品開発における薬物探索など、創薬への応用展開を念頭に、1分子のタンパク質を標的とする光パルス磁気共鳴法の実行可能性評価を行う。このために、標的タンパク質、または合成化合物(薬物候補)、さらには両者の結合状態を、ダイヤモンド基板表面の浅い窒素-空孔複合欠陥を用いた光パルス磁気共鳴法を用いて測定することが本研究の最終目標である。初年度である2017年度には、共焦点顕微鏡の光学系のセットアップと改良を施した。具合的には、ワイドフィールドから共焦点系に光学系を変更し、さらに溶液系を扱えるように、レーザ打ち上げ式で倒立配置を構築した。構築した共焦点系は、垂直面内分解能として約150nm、垂直深さ方向の分解能として1.8μmであることを実験的に確認した。加えて光磁気共鳴法のためのセットアップも組み込み、単一NVセンターが窒素の同位体である14Nまたは15Nのどちらを包含しているかを測定できることを実験的に確認した。構築にあたっては、共焦点顕微鏡像取得および光磁気共鳴測定のためのソフトウェアを自作し、それを自作した1光子検出系およびマイクロ波照射制御回路と連動させるようにした。また、自作ソフトウェア上に単一NVセンタの自動追尾制御機構を組み込み、それにより、微小なサンプルドリフトが生じても、24時間以上にわたって単一NVセンタを自動追尾し、追尾しながら光磁気共鳴測定を行えるシステムも構築した。実際の計測では、34時間の連続計測で最大6μmのサンプルドリフトが生じていることが実験的に判明したが、それでもなお、同一のNVセンタを自動的に追尾できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
顕微鏡のセットアップのための物品調達、回路およびソフトウェアの製作が順調であったため。
2年目である2018年度には、はじめに光学系のセットアップを完了する。具体的には、マイクロ波の照射を現在のCWからパルス波を照射できるように改良する。これにより、原理的に単一NVセンタを用いたNMR計測ができることになる。このためには、さらに自作ソフトウェアを改良する必要もある。同時に、当初の計画にあるようにダイヤモンド表面に微小容器を作製するためのプロセス構築を行う。微小容器の材料検討(シリコン酸化膜のCVD成長膜からはじめに探索する)、電子線リソグラフィ条件、および、シリコン酸化膜のエッチング条件の探索を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件)
Jpn. J. Appl. Phys. 57 (2018) 027001
巻: 57 ページ: 027001
10.7567/JJAP.57.027001
Appl. Phys. Express 10 (2017) 055503
巻: 10 ページ: 055503
10.7567/APEX.10.055503
Jpn. J. Appl. Phys. 56 (2017) 04CK08
巻: 56 ページ: 04CK08
10.7567/JJAP.56.04CK08
Nanotechnology 28 (2017) 385301
巻: 28 ページ: 385301
10.1088/1361-6528/aa7f49
Opt. Lett. 42 (2017) 3311
巻: 42 ページ: 3311-3314
10.1364/OL.42.003311