研究課題/領域番号 |
17H02763
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹中 康司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60283454)
|
研究分担者 |
竹澤 晃弘 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10452608)
片山 尚幸 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50623758)
岡本 佳比古 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90435636)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 新機能性材料 / 負熱膨張 / 熱膨張制御 / 材料組織効果 / 微粒子 |
研究実績の概要 |
課題①化学組成の制御による物理特性最適化:Sn置換が昨年度の成果であるFe置換よりも高温(~700 K)まで温度に対して線形の負熱膨張が維持されることを見出した。Ruに対して30%程度までSnを置換しても大きな負熱膨張が維持されている。高価なRuを安価なSnで置換できることはコスト低減につながり、この材料の工業利用にとって大きな前進である。 課題②材料組織の制御による物理特性最適化:同様の材料組織効果により負熱膨張が発現する他材料としてCu2V2O7を見出し、Sn置換体とともに精密なX線構造解析を行った。これにより、材料組織効果による負熱膨張発現にとって重要なパラメータの絞り込みを行った。また、Sn置換体とエポキシの複合化により、Fe置換体の粒径の半分の大きさ(5-10μm)でも十分な熱膨張抑制能力があることを明らかにした。このことは材料組織の出来具合は、作製法だけでなく、化学組成によっても影響されることを示唆しており、今後の組織最適化の取り組みにとって重要な知見である。スプレードライ法に加えて、ゾルゲル法による微粒子化の試みを始めた。 課題③機能と材料組織の相関解明:トポロジー最適化計算において、前年度の成果に加え、熱膨張と体積弾性率を同時に議論することができた。今後、この種の材料組織効果により負熱膨張が発現する要件を特定することに大きな貢献をすると考える。また、材料組織効果の直接検証を目指して、電子顕微鏡による観察に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた3課題をほぼ予定通り進展させたことに加え、ルテニウム酸化物と同様の材料組織効果で負熱膨張を発現する材料群としてCu2V2O7を見出し、ルテニウム酸化物との比較議論まで踏み込めたことは大きな成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
ゾルゲル法による微粒子作製の取り組みをさらに進める。材料組織効果による負熱膨張の場合、X線回折などにより格子定数を求める手法では熱膨張を評価することができず、従って負熱膨張を直接検証することができない。得られた微粒子をアルミニウムなどの金属やエポキシなどの樹脂と複合化することで、各種材料の熱膨張制御を試みると同時に、微粒子の熱膨張特性の評価を行う。トポロジー最適化計算の知見を現実の材料の機能向上に活用するため、電子顕微鏡による材料組織効果の直接観測を試みる。得られた成果をもとに大きな負熱膨張と高い剛性の両立を目指す。
|