研究課題/領域番号 |
17H02766
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾崎 雅則 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50204186)
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研究分担者 |
藤井 彰彦 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80304020)
吉田 浩之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80550045)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キラル液晶 / コレステリック液晶 / パターン配向 / 回折光学素子 / ベリー位相 |
研究実績の概要 |
コレステリック液晶(ChLC)などのキラル液晶が自己組織的に形成する螺旋構造の方位をパターンニングすることにより、平面からの反射にもかかわらず反射光の波面を任意に制御可能で、集光、偏向、拡散、光渦発生などの機能を持った反射型Flat opticsの開発を目的として研究を実施した。ChLCよりブラッグ反射される光の位相は螺旋構造の空間的な位相(螺旋位相)によって変化するが、空間的に螺旋位相を制御したChLCは反射型の回折光学素子として応用できる。しかし、ChLCによって得られる光の位相勾配は0からπラジアンまでの配向角の変化に対して0から2πラジアンであり、液晶配向分布のパターニング解像度によりその回折角は制限される。そこで、ネマティック液晶(NLC)とChLCを積層した構造により、NLC層で生じるベリー位相をChLC層により反射し、増幅する新規の反射型回折光学素子を提案、実証した。 はじめに、提案構造による位相勾配の増大を確認するため、入射光波長を550 nmに設定し、275 nm(半波長)のリタデーションを有するNLC層の上に右巻きChLCを積層した構造体を考え、4×4マトリクス法により解析した。次に、提案に基づく偏向素子を作製し特性を評価した。 波長550 nmにおいて左円偏光が選択的に反射され、NLC層の光軸方位を0からπまで回転させると、反射位相は、その変化の4倍に比例して0から4πまで変化した。この結果から、提案素子における反射光の位相勾配は従来素子の2倍になることを確認した。 NLCとChLCの積層構造により従来の反射型回折光学素子に比べて2倍の位相勾配を達成した。本研究成果は、大きな回折角を有する反射型回折光学素子の作製を容易にし、薄く平坦かつコンパクトな光学素子のさらなる高性能化の一助となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度で計画していた研究項目は、(1)光配向技術の高度化と性能限界の検討、(2)デバイス応用範囲の拡大、(3)液晶の外場応答性を活用した動的・チューナブル破面制御デバイスの作製であるが、(1)に関しては、配向領域の大面積化や配向周期の微細化に関する課題を解決する目的で、マスクに用いた液晶素子の配向分布を2枚のレンズで結像、転写することによって配向領域の拡大、微細化を可能とする露光手法を新たに導入し、予備的な成果が出ており次年度に向けて大きな進捗があったと言える。(2)に関しては、すでに半透過ホログラムの実現に成功しており、(3)に関しても外場応答性の確認に向けて予備的な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
配向領域の大面積化にむけて本年度において新たな複写露光方法の実現の目処が立ったことを受けて、さらに、配向周期の微細化に向けても検討を行い、素子の高性能化の目処立てるようにする。また、コレステリック液晶のみならず、コレステリックブルー相液晶の配向制御や電場印加による格子方位制御に関して予備的な成果が出ているので、それを発展させていく。
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