研究実績の概要 |
今年度は、(Ge,Mn)Te系の強磁性転移温度増大のため、試料合成後のアニール条件の最適化を行った。高温でのX線回折の結果から、500 K程度の温度でMn原子の再配列が起こりやすいことが判明したので、この温度で長時間のアニーリングを行った。その結果、強磁性転移温度が200 Kを超えることに成功した。これは、磁性半導体として最も盛んに研究されてきた(Ga,Mn)As系の転移温度を超えるものである。 さらに、徐冷した試料およびアニール処理した試料で、SPring-8のビームラインBL44B2 を使って粉末X線回折を行い、Mn濃度が低く菱面体歪の大きい相R1、およびMn濃度が高く菱面体歪が小さい相R2、の存在を仮定して、リートベルト解析を行った。その結果、徐冷またはアニール処理により、高温状態におかれた時間が長い試料ほど、Mn濃度の高いR2相の割合が大きく、高い強磁性転移温度を示すことが明らかになった。このことは、前年度までに報告したMn不均一分布の透過電子顕微鏡による観察結果と合致している。また、Mn濃度の高い立方晶が現れ始めると、強磁性転移温度は減少することが明らかになった。このことは、菱面体歪を保ったまま、できるだけ多くのMnイオンを導入することにより、高い強磁性温度を得ることができるということを示している。これは、今後の希薄磁性半導体開発を行う上で、物質設計の指針となることが期待される。 また、今年度は、周辺物質を探索しており、Ge欠損したGeTeにおいて生じる超伝導の転移温度がドーピングによって増大することを見出した。
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