研究課題/領域番号 |
17H02772
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石谷 善博 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60291481)
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研究分担者 |
三宅 秀人 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (70209881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フォノン / 励起子 / PXRモデル / 深い準位 / エネルギー局在 / GaN |
研究実績の概要 |
平成29年度は(1)フォノンエネルギーと電子エネルギー禁制帯幅の大小を逆転するヘテロ接合、(2)励起子・励起子分子安定性、(3)THz域光素子を対象としたフォノン素子の物理の3点を研究課題とした。本研究の対象は紫外発光素子、太陽電池とTHzから中赤外の発光素子およびTHz領域光素子を対象としている。紫外発光素子では窒化物を主な対象材料とし、太陽電池では可視近赤外対応の禁制帯域にある半導体、THz域では窒化物に限らず広く材料を求める。(1)では、GaInNやAlInNを中心としてその組成制御による超格子構造とし、(1)の可能性を理論的に検討した。その結果、状態密度が主に集中するエネルギーの大小を電子禁制帯幅と逆転できる可能性があり、またAlInNでは電子禁制帯幅の組成依存性に大きなボーイングがあるため、制御ができる可能性が強いことが分かった。(2)では電子衝突・励起子衝突・フォノン衝突による状態間遷移過程を取り入れたポピュレーション分布の計算コードが構築され、励起子分子にまで計算が拡張された。励起子では主な発光種となる主量子数1の励起子のポピュレーション減衰寿命がポピュレーション分布に大きく支配され、従来考えらえていたバルク材料における温度の3/2乗則よりも長寿命となることが分かった。またLOフォノンとLAフォノンの過程について詳細が検討され、LOフォノンから制御を始める方針が構築された。(3)ではGaAs基板上金属のライン/スペースのストライプ構造の加熱による8.5THzで全半値幅11/cmの発光が得られた。またSiC基板上に成長したAlN膜について、界面ポラリトンモードがAlN膜に閉じ込められることが分かり、今後の中赤外光の導波に応用できる可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラマン分光では窒化物のラマン信号強度が弱く、更に2波長励起によるルミネッセンス除去または低減の必要があり、試料台の安定性の改善や測定ソフトウエアの変更などが必要であった。現在これらの問題をほぼ解決したが、時間を要したため計画がやや遅れている。超格子設計についてもやや遅れているが、一方で分子動力学法によるフォノン輸送シミュレーションについては進展があり、GaNで窒素空孔よりGa空孔の方がエネルギーが局在しやすいことを示す結果が得られ、これについては進展と遅延が相殺されている。
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今後の研究の推進方策 |
改善されたラマン分光装置を用いて混晶組成の不均一性の大きいGaInNやヘテロ界面におけるフォノン輸送について、伝導するフォノンの波数に関する特徴を組成揺らぎや界面におけるフォノンエネルギー分散の不連続的変化などに着目して理論的検討を加えながら解明を進める。このために様々なヘテロ接合構造を三重大学が供給する。LOフォノンが主体となる発光過程についてフォノン閉じ込めによるフォノン状態占有度増加に伴うTHzから中赤外の発光強度の増加、構造の最適化、光励起による量子干渉と電磁誘起透明化の基礎過程の発現を目標とする。励起子ではシミュレーションコードに不純物による励起子束縛や非輻射過程を導入し、また量子井戸へ展開する。また、THz域の研究で明確となったLOフォノン共鳴の輻射速度は理論的に高速であることが見積もられるため、金属ストライプ構造導入によるLOフォノンエネルギー放出(発光)による励起子安定化についても実験的に検討する。
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