研究実績の概要 |
4H-SiC MOS界面においては「PbCセンター」と名付けた炭素由来の界面欠陥/界面準位が重要であることが分かってきた。この欠陥の正体を明らかにするため、電流検出型電子スピン共鳴(EDMR)分光を使って微弱な13C核スピン超微細分裂の検出を試み、通常の電子スピン共鳴では4000日以上かかる検出に成功した。PbCセンターの高感度EDMRスペクトルからは炭素原子1サイト分の13C核スピン超微細分裂に加えて、Si原子3サイト分の29Si核スピン超微細分裂が同時に観測された。その結果、PbCセンターが界面に垂直な炭素ダングリングボンド欠陥(Si3≡C・、・は不対電子を表す)であることが確定した。この欠陥はSi(111)/SiO2界面のPbセンター(界面Siダングリングボンド欠陥、Si3≡Si・)によく似ている。さらに東京工業大学の松下雄一郎グループの第一原理計算(VASP+HSE06)との比較によって、PbCセンターが4H-SiC(0001)面の炭素アドアトム上に発生していることも明らかになった。以上の結果はAppl. Phys. Lett.誌(Vol.116, p.071604 (2020))にて発表され、Featured articleにも指定された。 PbCセンターはダングリングボンド欠陥なので、中性状態から電子、正孔のどちらも捕獲することができる。このためnチャネル、pチャネルの両方の4H-SiC MOSFETにおいて可動キャリアの減少を招き、これが移動度劣化につながる。界面窒化によってPbCセンターは急速に減少するが、窒化時間が10分を超えて60分、120分になると2種類の窒素関連欠陥が発生することが明らかになった。これらはEDMR解析の結果から、Kセンター(N3≡Si・)とincomplete K center(C2N1≡Si・)である可能性が高いことが分かった。
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