研究実績の概要 |
励起光を断続的に強度変調した際の光励起キャリアの非発光再結合に伴う試料の熱膨張量を周期的接触モードでのAFMカンチレバー振幅の変化から計測する光熱モードAFM(PT-AFM)を利用して、Cu(In,Ga)(S,Se)2[以下、CIGSと記す]系太陽電池材料におけるアルカリ処理効果について検証した。その結果、同種太陽電池に対して広く使われているCdSバッファ層とCIGS層との界面の不活性化にアルカリ処理が寄与していること、またその効果は結晶粒界近傍でより顕著であること、などを明らかにした。 また、光照射による表面空乏層容量の変化を捉える光容量AFM(PCap-AFM)を構築する上で重要な静電引力計測において、我々が考案した二重バイアス変調法の有効性を実験的に示すとともに、空乏層容量の電圧依存性の強弱を直接画像化する新手法の開発にも取り組んだ。その結果、CIGSの結晶粒内と結晶粒界では、空乏層容量の電圧依存性に差異があり、特に、結晶粒界近傍にはバンドギャップ内の深い準位が高密度に分布している一方、CdSバッファ層堆積時に生じるCd拡散がそのような準位を不活性化している可能性があることを明らかにした。 一方、光援用ケルビン・プローブ・フォース顕微鏡(P-KFM)においては、これも我々の独自手法である間欠バイアス印加法を適用することによって、光起電力の時間分解計測に取り組んだ。現段階は、まだ初期的なデータ検証の段階であるが、マイクロ秒から数十マイクロ秒オーダで減衰する光起電力信号の獲得に成功した。
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