研究課題/領域番号 |
17H02787
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
|
研究分担者 |
橘田 晃宜 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90586546)
宇都宮 徹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70734979)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 原子間力顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / リチウムイオン電池 / 電気化学 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン蓄電池 (LIB) は近年幅広く用いられているが、そのさらなる用途の広がりとともに、高容量化・サイクル特性の向上・大電流化などの性能向上への要望は尽きない。また、安全性の向上も重要な課題である。イオン液体は高い電気化学安定性と難揮発性・難燃性という特徴を有し、新たなLIB電解液として期待されている。一方、イオン液体は難揮発性であるため、真空中で扱いが可能であるという特徴がある。われわれは、この特徴を生かした真空電気化学原子間力顕微鏡 (AFM) を独自に開発してきた。本課題では、これをLIB電極材料に適用し、その電解液/電極界面の高分解能構造分析により、電池開発への新たな知見を得ることを目的としている。 平成29年度は、主に負極材料であるチタン酸リチウム (Li4Ti5O12; LTO) およびシリコンを中心に研究を行った。特に、Li+イオン挿入過程における表面構造変化に着目し、研究を遂行した。LTO(111)試料については、その表面構造を原子ステップレベルで維持したまま、Li+イオン挿入が可能であることが示された。これは、LTO負極の優れたサイクル特性と密接に関係していると示唆される。 一方、Si(111)試料においては、Li+イオン挿入過程において、表面にナノスケールの構造物が形成されることが確認された。シリコンはLTOに比べてLi+イオン挿入電位が低く、高い電気化学安定性を有するイオン液体を用いても、その分解は避けられない。これは有機溶媒電解液でよく知られるSEIと類似の現象である可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空電気化学AFMの電池材料への適用が可能であることが実証された。また、電気化学環境下での原子分解能観察にも成功しており、研究は順調であると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
LTOについては、Li+イオン挿入過程の分析はほぼ完了した。これを発展させ、Li+イオン脱挿入を繰り返し、いわゆるサイクル特性と表面・界面構造との関連性について研究を進める。シリコン負極については、Li+イオン挿入過程における表面形成物についてさらなる調査を行うとともに、LTOと同様にLi+イオン脱挿入過程の分析へと展開を図る。また、負極材料だけでなく、正極材料についても研究を進める。
|