研究課題/領域番号 |
17H02788
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保 理 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70370301)
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研究分担者 |
田畑 博史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00462705)
中山 知信 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 副拠点長 (30354343)
片山 光浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70185817)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 走査プローブ顕微鏡 / 表面・界面物性 / 物性実験 / 電子・電気材料 / ゲルマネン / 層状半導体 / 水素終端 |
研究実績の概要 |
ゲルマニウム(Ge)のシート構造であるゲルマネンは、グラフェンに匹敵する高キャリア移動度を持ち、バンドギャップが電界によって変調できるなど、グラフェンとは異なる物性が予測されている。一方、実験で報告されたゲルマネンは数少なく、その特徴であるバンド構造・ディラックコーンが発現していることを示す実験結果もほとんどない。 本年度は、我々のグループで発見し、昨年度論文報告した Al(111)√7×√7周期のゲルマネンについて、イオン散乱分光法や角度分解光電子分光法によってその物性を詳細に調べた。この結果、このゲルマネンでは、ディラックコーンは発現していないことがわかった。また、以前から報告されている Al(111)3x3 周期構造についても同様にイオン散乱分光法と角度分解光電子分光法による解析を行った。詳細は解析中であるが、こちらもディラックコーンの発現は無いと思われる。また、昨年度から行っている、層状半導体のセレン化インジウム基板(理想ゲルマネンとの格子不整合が小さい)上でのGeシート作製についてもさらに実験を行い、この表面上では大面積化できないと結論づけた。 一方、今年度より、水素やアルキル基で終端した材料・ゲルマナンの作成に取り組んでおり、その高品質化を目指して研究を行っている。ゲルマナンは結晶ゲルマニウムと異なり直接バンドギャップを持ち、移動度も高いことが予測されている。さらに水素終端したゲルマナンから水素を脱離させることでゲルマネンを作製できることが理論的に示唆されている。しかし、これまでのところ報告されている移動度は200 cm^2/Vs 程度で結晶Siにも劣るため、更なる高品質化が求められている。現状では、FET特性のファーストデータを得たが、上記の移動度を超えるには至っておらず、今後さらに高品質化を目指した研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非導電性基板上に大面積のゲルマネンを作製することについては、第一原理計算によってディラックコーンを維持したゲルマネンの形成が予想されるコランダム系結晶のc面を基板としたゲルマネン作製に着手したところであるが、若干の遅れが生じている。一方で、水素やアルキル基で終端した材料・ゲルマナンの作成を開始し、SiO2/Si 基板上の薄片試料をコンスタントに作成できるようになった。多探針走査プローブ顕微鏡による計測も含め、FET特性のファーストデータを得たことなどから、今後の展開に目処が立ったと考える。加えて、非導電性基板ではないものの、Al(111)基板上のゲルマネンについて、イオン散乱分光法や角度分解光電子分光法を用いた詳細な解析を進めた結果については、招待講演を含めた国内、国際会議で口頭発表を行い、現在論文投稿の準備中であるなど、当初の目標以上に進んだ面もある。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、ゲルマネンの創製に取り組む。また、目標である高移動度トランジスタのチャネル材料への利用に向けて、以下の2点に重点を置いて研究を進める。
1.これまで非導電性基板として、金属カルコゲナイド基板上へゲルマニウム(Ge)原子のエピタキシャル成長を試みてきたが、未だ大面積の膜の形成に至っていない。そこで、第一原理計算によってディラックコーンを維持したゲルマネンの形成が予想されるコランダム系結晶のc面を基板としたゲルマネン作製を試みる。コランダム系結晶は絶縁性が高く、作製した膜の配列秩序性については、ラマン散乱分光法や電子照射アシストを用いたイオン散乱分光法にて計測を行う。一方、昨年度より、水素やアルキル基で終端した材料・ゲルマナンの作成に取り組んでおり、その高品質化を目指して研究を行う。ゲルマナンは結晶ゲルマニウムと異なり直接バンドギャップを持ち、移動度も高いことが予測されているが、これまでのところ報告されている移動度は200 cm^2/Vs 程度で結晶Siにも劣るため、更なる高品質化が求められている。さらに水素終端したゲルマナンから水素を脱離させることでゲルマネンを作製できることが理論的に示唆されている。 2.ゲルマネンの特徴の一つに、垂直ゲート電界によってバンドギャップが変化することが理論的に予想されている。一方で、最近では黒リンなどⅣ族元素シート以外の原子層材料でも電界によるバンドギャップ変調が報告されてきている。しかし、その数はまだ少なく、高移動度トランジスタのチャネル材料としての利用は未知数である。そこで、ゲルマネンと平行して黒リンなどの原子層材料についても作製を試み、その物性評価やゲート電界によるバンドギャップ変調の検証を行う。
得られた結果は適宜学会や投稿論文にて発表を行っていく予定である。
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