研究課題/領域番号 |
17H02791
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松野 丈夫 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00443028)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スピン・軌道相互作用 / スピントロニクス / 5d電子系 / イリジウム酸化物 / パルスレーザー堆積法 |
研究実績の概要 |
大きなスピン-軌道相互作用を持つ5d電子系酸化物が強相関物理学の新しいパラダイムとなっている。スピン‐軌道相互作用がクーロン相互作用よる協奏現象という5d電子系の特徴をエレクトロニクスとして活用することを目指した。本年度はIr酸化物からなる界面系を3つ取り上げてスピン流物性を調べた。 (1) 2層膜Py/IrO2においてホール電圧の二次高調波を測定することでスピン軌道トルク生成を確認した。磁化方向に依存するDLと磁化方向に依存しないFLの2つの成分を独立に評価することでIrO2がPtやTaと同程度の高いDLスピン軌道トルク生成効率を持つことが分かった。生成効率の膜厚依存性は、ドリフト拡散モデルと一致し、スピンホール効果に起因することが明らかとなった。 (2) Y3Fe5O12(YIG)を含む界面において電流-スピン流変換効率とスピン流の透過度をスピンホール磁気抵抗効果(SMR)により調べた。Si基板上の多結晶YIG/Ptにおいて、報告例の多いGGG基板上のエピタキシャルなYIG/Ptと同程度の信号が観測された、YIG/IrO2では有意な信号が観測できなかった。YIGとIrO2の界面の質が原因となっていると考えられる。 (3) エピタキシャルSrIrO3(SIO)/La2NiMnO6(LNMO)界面において、磁性層LNMOにおいて強磁性共鳴により生じたスピン流を非磁性層SIOに注入し、逆スピンホール電圧として検出するスピンポンピング測定を行った。フォトリソグラフィにより導波路デバイスを形成することにより、エピタキシャル界面LNMO‐SIOのスピンポンピング信号を確認した。これはエピタキシャル酸化物界面における初めてのスピン流観測であると同時に、参照資料であるLNMO-Ptと比べても同程度の信号強度であることから、スピントロニクスにおけるエピタキシャル界面の重要性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数の界面系について実験を展開し、酸化物界面におけるスピン流の学理に迫る複数の結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
酸化物界面の磁性、特に輸送特性と関連した物性はまだ明らかになっていないことが多い。昨年度から着手したスピン流物性が重要な方向性として開花しつつあり、最終年度はそちらに注力する予定である。
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