研究課題/領域番号 |
17H02796
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 敏 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40359667)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光渦 / フォトニック結晶 / 量子ドット / ナノ共振器 / 共振器QED |
研究実績の概要 |
本提案の基礎となるH1型フォトニック結晶ナノ共振器の四重極モードのモード分布を数値解析により詳細に検討した。縮退した2つの四重極モードを±90度の位相差をつけて重ね合わせた場合の共振器内の光スピン角運動量密度を計算し、共振器内で高い円偏光度を示す場所が存在することを明らかにした。さらに、その位置に量子ドットがおかれた場合、量子ドットからの円偏光発光のハンドネスに依存して、l=±1の軌道角運動量を持った光渦が共振器から放射されることを示した。量子ドットからの円偏光発光のハンドネスはその電子のスピン角運動量の符号により変化するため、この結果は、量子ドット内のスピン状態に依存して符号の異なる角運動量を有する光渦が生成できることを示すものである。また、放射される光は円偏光を有しており、全角運動量Jは±2となっていることも確認できた。これは、±90度の位相差をつけて重ね合わされた四重極モードは共振器内で回転しており、その角運動量に対応するものである。さらに、外部からl=±1の軌道角運動量を持つ円偏光ラゲールガウスビームを照射した場合、共振器内に回転する四重極モードが誘起され高い円偏光度を示す場所が生成されることも確認した。この場所に量子ドットがあった場合には、スピン偏極した電子が生成できることを示すものである。これらの結果は、量子ドット内の電子のスピン角運動量と光の軌道運動量を結ぶインターフェースとして利用できる可能性があることも示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値解析により、本研究で提案する単一光子光渦生成法の有効性を具体的に示すことができたともに、その逆過程として、光渦の照射による量子ドット中へのスピン励起も可能であることを明確にし、電子のスピン角運動量と光の軌道運動量を結ぶインターフェースとして利用できる可能性があることも示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
単一光子光渦の測定系の構築を進める。特に課題である系の安定化を図る。 また、光渦生成のためのPhCナノ共振器の形成技術の開発に引き続き取り組む。特に、本提案方式の基礎となる縮退モードを実現するために、モードの共振器制御技術の開発を中心に取り組む。具体的には、通常プロセスで作製したH1型ナノ共振器の四重極モードの波長分離の光学評価、対応するPhC構造のSEMによる詳細な構造評価を実施し、その知見を基に意図的に非対称性を導入したパターンを検討し、残留離調の補正を試みる。また、H1型共振器についてその検討を更に進め放射された光の光学系への結合効率の向上を目指した共振器デザイン、H1型以外の共振器構造の検討などを進める。更に、本方式に変わる新たな発生法についても探索する。
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