研究課題/領域番号 |
17H02800
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 克昌 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80362664)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ラマン散乱顕微鏡 / ラマン分光法 / 構造化照明 / 超解像顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は、高解像度かつ高速なラマン散乱分光顕微鏡の開発とその材料分析、生体分析分野への応用を目的としている。本年度は、まず、高解像度なラマン散乱観察を実現するための照明法について理論的に検討を行い、それを実際に実現するための光学系の設計、および試作を進めた。照明法の検討については、格子状の照明パターンにより微細な試料構造のコントラストを増強されることにより、従来法ではノイズに埋もれていた信号情報を取り出す手法を検討した。ラマン顕微鏡では分光測定光学系も空間分解能を決定する一要因であるため、照明光学系と分光検出光学系との光学特性を踏まえることにより顕微鏡全体の結像特性を理論的に把握し、それに基づいて光学系の設計を行った。特に照明光学系については、格子状照明パターンの実験的な最適化が必要となるため、空間変調素子を用いた照明パターンの制御が可能な光学系とし、実際にその光学系の試作を行った。試作した光学系により照明パターンの空間分解能、切り替え速度、また光の利用効率について測定を行い、顕微鏡光学系に組み込みに適した光学系設計のための基本情報を取得した。また、ラマン顕微鏡の光学系全体の設計、および試作も進めた。ラマン顕微鏡の光学系では、将来の高速化を見据え、複数の波長域を同時に検出できるマルチバンド検出が可能な分光検出光学系を取り入れた。試作した装置において、ラマン顕微鏡としての基本的な動作確認、光学特性の評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究目的は、高空間分解能ラマン散乱顕微鏡の光学系設計とその試作であり、どちらもおおむね順調に進展している。 光学系設計では、高空間分解能を実現する照明パターンと、各照明パターンにおける分光検出領域を求めることにより、顕微鏡光学系全体の結像特性を与える理論構築を行い、照明光学系、および検出光学系の設計値を求められるようにした。それに基づき、顕微鏡全体の光学系およびシステム制御系、特に照明パターン制御システムの設計を行った。特に、その試作のために必要な光学部品、光学デバイスの選択を行った。また、パターン照明制御には、空間変調素子を用いることにより、任意の照明パターンの実現が可能なシステムを考案した。検出光学系では、任意のパターン照明下においても広い検出波数領域が得られるようなマルチバンド分光光学系とした。 上記の照明/検出光学系が組み込み可能なラマン散乱顕微鏡光学系を試作し、ポリマービーズ等のテスト試料を観察し、構築した顕微鏡の光検出効率の評価、走査システム等の基本的な動作確認を行った。また、パターン照明光学系は別途試作を行い光学特性の評価を進めており、実際にスループット、制御パターンの空間分解能の確認を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に行った照明パターン制御光学系の最適化をさらに進め、その後、顕微鏡システムに組み込む。照明パターン制御光学系に用いる空間変調素子のスループットとそれにより照明パターン空間分解能にはトレードオフの制限があるため、それを軽減する光学系設計を行う。特に、照明光の利用効率を高めるために位相と振幅の変調を行う空間変調素子を組み合わせることを検討する。構築した照明光学系を前年度に試作したラマン顕微鏡に組み込むことにより、撮像可能な空間分解能を実験的に確認し、十分な数値が得られるかどうか確認する。また、結果が十分で無い場合は照明制御光学系の再検討も視野に入れて研究を進める。 上記の照明光学系の組み込みの他に、撮像速度向上のためのマルチスリット/マルチバンド検出光学系の設計、および組み込みも行う。高解像度測定では多数回の測定が必要となるため、実用には撮像の高速化が必要となる。そのため、格子状照明パターンからの複数の部位、波長バンドからの同時測定が有効であり、そのための光学系設計とその実験的な評価を行う。
|