数フェムト秒の周期で振動する超短光パルスの光電場を直接的に計測することは、その周期よりもはるかに短いアト秒パルスによってしかできないものと信じられてきた。本研究では、光電場の周期よりも長いパルスを用いても、光電場の振動する様子を計測する技術を確立し、その技術を使って光電場振動に敏感な非線形光学の研究を進めることを目標とする。 以前から使われている定義に基づいて計算したサイクル数が0.5以下になるようなパルスの発生に成功し、その光電場波形計測を、周波数分解光ゲート法と電気光学サンプリング法との組み合わせで行うことができた。計測された波形は計算上0.3サイクルとなり、1周期の半分以下となった。その光電場の位相を、入射光パルスが通過する結晶の角度を変えるだけで制御できることを示した。 非線形光学過程の研究の一つとして、そのようなサブサイクルパルスの発生において、入射光パルスの繰り返し周波数が重要であることを見出した。パルス発生においては、気体を波長変換媒質として使っているが、高強度パルスによって原子がイオン化した場合に、そのイオン化した原子の寿命に近い繰り返し周波数であると、波長変換信号が非常に不安定になることがわかった。繰り返し周波数を10kHzから5kHzに落とすことで、安定性が大きく向上することを示した。 また、サブサイクルパルスを固体結晶に入射し、それから発生する高次高調波についての研究も進めた。光学的ブロッホ方程式を数値的に解くことによって、発生した高次高調波が摂動論の範囲であることを示した。そして、入射光パルスの強度が4倍以上になれば、プラトーやカットオフといったサブサイクル特有の現象が見られる可能性があることを示した。
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