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2018 年度 実績報告書

GHz表面弾性波の時間分解イメージング測定と音響カイラリティ制御

研究課題

研究課題/領域番号 17H02807
研究機関北海道大学

研究代表者

松田 理  北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30239024)

研究分担者 友田 基信  北海道大学, 工学研究院, 助教 (30344485)
O・B Wright  北海道大学, 工学研究院, 教授 (90281790)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード表面音響波 / 時間分解イメージング / カイラリティ / 任意周波数 / 空間位相変調器 / 空間位相変調器
研究実績の概要

本研究の第一の目的は、表面弾性波を活用する材料・デバイスの研究・開発において強力なツールである表面弾性波の時間分解イメージング法において、従来の方法で弱点とされた周波数分解能の不足を解決することである。この問題に対して、我々は測定に用いる繰り返しレーザーパルス列の強度を適切な周波数で変調することで任意周波数音響波成分を励起し、これを時間分解測定する手法を確立・発展させる。また、この手法を用いてフォノニック結晶・メタマテリアルの音響特性を調べる。本研究の第二の目的は、カイラリティを有する音響場とカイラリティを有する構造との相互作用を明らかにすることである。カイラル物質と 光との相互作用については広く研究されているが、音響場との相互作用は未開拓の分野である。しかしながら、音響カイラリティはカイラル物質の選択的励起や 音響波の単一方向伝播などの新しい応用が見込まれ、その基本的理解は重要である。
本年度は前年度より構築している上記の任意周波数時間分解二次元イメージング装置を改良し、測定の効率化を図った。特に、狭周波数帯域の光検出器とヘテロダイン法を組み合わせていた検出部分を見直し、広周波数帯域光検出器の使用によりヘテロダイン法を廃することで、装置の安定性が大幅に向上した。この装置を利用して、ガラス基板上にミクロンサイズのシリカ球を配置した音響メタマテリアルの表面音響波伝播特性を測定し、球の振動モードと表面音響波のモードの結合による特徴的な音響分散関係を実験的に取得した。また2次元フォノニック結晶の分散関係を従来よりも10倍以上の周波数分解能で測定した。さらに高速CMOSカメラを用いて二次元イメージングの高速化の研究を進めた。カイラリティ関連の研究では、カイラルな構造に基づくプリズム構造の音響波伝播特性のシミュレーションを進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の第一の目的は任意周波数音響振動成分の励起・検出原理に基づく効率的な測定・解析方法を確立することである。今年度は、任意周波数音響振動の励起検出原理に基づく光学系を改良し、装置の安定性を高めた。本手法では80MHz程度の繰り返し周波数を持つ光パルス列を40MHzまでの周波数で変調し、検出信号中においてこの変調信号に同期した微小な振動成分をロックインアンプを用いて計測する必要がある。前年度まではこの部分に周波数帯域の狭い光検出器を使用し、これを補うために励起・検出双方の光パルス列を変調するヘテロダイン法を用いていたが、これは構成が複雑で、外部からの電磁ノイズ混入に弱いという問題があった。今年度は、安定に動作する広周波数帯域光検出器を用いて、この問題を克服し、測定の効率と信号雑音比が大幅に改善された。また音響メタマテリアルや2次元フォノニック結晶の音響波伝播を改良された装置を用いて測定し、詳細な分散関係を得た。
本研究の第二の目的は、カイラリティを有する音響場とカイラリティを有する構造との相互作用を明らかにすることである。これに関する事項として、カイラルな構造を持つ音響メタマテリアルのシミュレーションについては、特にカイラル構造を基本構造とするメタマテリアルを用いて構成したプリズム構造において、カイラリティによって負屈折現象の発現が大きく変化する現象がシミュレーションで確かめられている。今年度はシミュレーションで用いた試料を実際に作製し、これに関する諸現象を検証する予定であったが、試料の作製に手間取り、計画に若干の遅れが生じている。

今後の研究の推進方策

本年度は前年度に構築した任意周波数音響振動成分励起・検出の原理に基づく光学測定系を改良し、効率と定量性に優れた測定・ 解析方法を確立する。既に導入した広周波数帯域光検出器による測定系をもとに、制御プログラムを見直し、測定の自動化を図る。また前年度に構築を開始した高速CMOSカメラを用いた二次元イメージング装置を完成させ、測定時間の短縮を図る。また、シミュレーションに基づいて設計したカイラルフォノニックメタマテリアル等の試料を実際に製作し、上記装置による時間分解イメージングによりその特異な音響伝播特性を検証・解明する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Le Mans University(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Le Mans University
  • [雑誌論文] Time-domain imaging of gigahertz surface waves on an acoustic metamaterial2018

    • 著者名/発表者名
      Otsuka Paul H、Mezil Sylvain、Matsuda Osamu、Tomoda Motonobu、Maznev Alexei A、Gan Tian、Fang Nicholas、Boechler Nicholas、Gusev Vitalyi E、Wright Oliver B
    • 雑誌名

      New Journal of Physics

      巻: 20 ページ: 013026~013026

    • DOI

      10.1088/1367-2630/aa9298

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 任意周波数イメージング法による2次元フォノニック結晶のGHz音響波伝播特性の詳細測定2019

    • 著者名/発表者名
      松田理, 村本裕貴, 古賀裕章, 西田浩紀, 藤田健太郎, 友田基信, Oliver Wright
    • 学会等名
      日本物理学会第74回年次大会
  • [学会発表] 完全バンドギャップを有する音響メタマテリアル梁の設計2019

    • 著者名/発表者名
      藤田健太郎、友田基信、Oliver B. Wright、松田理
    • 学会等名
      日本物理学会第74回年次大会
  • [学会発表] Time-resolved imaging of gigahertz surface acoustic waves: recent development and applications2018

    • 著者名/発表者名
      Osamu Matsuda
    • 学会等名
      Laser Ultrasonics 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Dependence of acoustic metamaterial response on geometrical handedness2018

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Fujita, Motonobu Tomoda, Oliver B. Wright, Osamu Matsuda
    • 学会等名
      The third A3 metamaterials forum
    • 国際学会
  • [学会発表] GHz 帯表面弾性波の高速フルフィールド光学的イメージング2018

    • 著者名/発表者名
      木原 会, ペツリル トマス, 友田 基信, 松田 理
    • 学会等名
      第39回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム(USE2018)
  • [学会発表] 2 次元フォノニック結晶における GHz 帯任意周波数表面弾性波の時間分解イメージング2018

    • 著者名/発表者名
      村本 裕貴, 古賀 裕章, 西田 浩紀, 藤田 健太郎, 友田 基信, 松田 理
    • 学会等名
      第39回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム(USE2018)
  • [学会発表] 反転対称性の破れた二次元音響メタマテリアルによるGHz音響波の伝播制御2018

    • 著者名/発表者名
      藤田健太郎、友田基信、Oliver B. Wright、松田理、柳澤亮人、野村政宏
    • 学会等名
      第79回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 負の屈折を起こすGHz音響メタマテリアルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      藤田健太郎、友田基信、Oliver B. Wright、稲垣敬介、松田理、柳澤亮人、野村政宏
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会

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公開日: 2019-12-27  

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