研究課題
本研究の目的は、音響誘起電磁法(ASEM法)により局所的な磁気ヒステリシス曲線を取得し、その曲線から得られる保磁力や損失等の磁気パラメータを空間マッピングする磁気顕微計測技術を開拓することである。(a)高周波ASEMプローブの開発音波遅延材として水を媒体とし、焦点距離12.7mmの20MHz帯凹型PVDF振動子を導入した。受信系はLCR回路と低雑音アンプで構成され、受信コイルは防水樹脂内に封じた。上記超音波振動子と受信系を一体化し、XYステージにより自動スキャンされるASEMプローブを作製した。励磁用の小型電磁石は試料裏側に設置した。この高周波ASEMシステムを用いて、まず半分の領域だけ酸化膜(黒皮)の付いた一般鋼で性能評価した。その結果、空間分解能は約200 μmと見積もられ、従来システムに比べて5倍程度改善された。次に、珪素鋼板に対してマグネットビューアとASEM画像を取得し、比較検証を行った。その結果、約200 μmサイズの磁区構造が信号の位相反転として明確に観測された。また、結晶粒界の可視化も確認された。これらのことから、当初目的の一つであった結晶粒や磁区構造の可視化に成功した。今後、信号位相を含めてより明確に可視化される条件を確定するに加えて、更なる空間分解能の向上のために周波数40MHz帯に挑戦する。(b)高速マイクロジェットによる局所音圧発生技術の開発レーザー光パルスを用いた方式を用いて、マイクロジェットによって発生する音波パルスの周波数特性を調べた。その結果、数kHz程度の音波パルスが100 μm程度の局所領域に照射されていることが確認され、音波の波長よりもはるかに小さな領域で音圧を発生できることが判明した。しかしながら、繰返しパルスにおける再現性が十分ではなく、今後、別方式により安定したマイクロジェット発生を目指す予定である。
2: おおむね順調に進展している
高周波ASEMプローブの開発により、当初目的の一つである結晶粒や磁区構造の可視化に成功したから。超音波周波数を向上させると、超音波集束スポットサイズは小さくなるため、空間分解能が向上する見込みは十分にあった。ただし、スポットサイズを小さくすると信号強度は小さくなり、また、各結晶粒や磁区においてどのようはASEM信号波形の変化が現れるかは不明であった。今回、超音波遅延材を水溶液に変更し、焦点スポット近傍に防水した受信コイルを設置することにより、20 MHz帯のASEM信号観測が可能になった。鉄鋼表面に形成された酸化膜(黒皮)境界面近傍で空間分解能を確認し、また珪素鋼板において明確な磁区構造が可視化された。このことは、計画する磁気顕微観察が可能であることを意味し、今後、更に高周波化する意義を確認した。
20 MHz帯ASEM信号波形における位相情報を考慮し、スピンダイナミクスに関する物理量(緩和時間等)を抽出する。また、40MHz帯に移行し、更なる空間分解能向上を目指す。一方、マイクロジェットの開発に関しては、機械方式に変更し、再現性のあるパルス発生を目指す。
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