研究課題/領域番号 |
17H02813
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
難波 愼一 広島大学, 工学研究科, 教授 (00343294)
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研究分担者 |
岸本 牧 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 量子生命科学研究部, 上席研究員(定常) (40360432)
長谷川 登 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主幹研究員(定常) (50360409)
錦野 将元 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, グループリーダー(定常) (70370450)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コヒーレントプラズマX線レーザー / X線パラメトリック増幅 / 高次高調波 |
研究実績の概要 |
今年度はX線パラメトリック増幅による高次高調波を発生させるための最適な実験条件の調査,及び,高調波を増幅するためのプラズマ増幅媒質の発生に重点を置いて研究を行った.同時に時間依存シュレーディンガー方程式を用いた数値シミュレーションを行い,実験で観測されたパラメトリック増幅による高次高調波を再現できるかを調べた.以下に具体的な成果を示す. (1)パラメトリック増幅高次高調波発生の最適化実験では,二つのガスジェットの圧力,ジェット間距離と高調波スペクトルの依存性をアト秒分解で調べた.計測した高調波のうち,63次と77次のスペクトルに着目したところ,アト秒スケールで大きな違いが見られた.2次元フーリエ変換を行ったところ,21PHz, 28PHzのところに明確なピークが出現した.現在,この結果をウィーン工科大のSeres博士と調査中である. (2)高次高調波を増幅するためのプラズマ増幅媒質の発生を試みた.ナノ秒YAGレーザーでプリプラズマを発生させ,続いて斜めからフェムト秒レーザーをこのプラズマに入射してメインプラズマを発生させる,いわゆるGRIP法を用いた.本年度の実験ではターゲットとして繰り返し使用が可能なモリブデンを用いた(通常は銀ターゲット).その結果,18.2nmのプラズマX線レーザーの発振に成功した.従って,シード高調波を増幅する媒質が発生できたことになる. (3)研究協力者のカタルーニャ工科大のSerrat博士と共に,量子力学的数値シミュレーションにより高調波発生実験で得られたスペクトル形状が数値計算で再現できるのかを調べた.パラメトリック増幅効果をプログラムに組み込むことにより,実験でのスペクトルを非常に良く再現することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,大きく分けて次の3つの課題に分けられる.(1)X線パラメトリック増幅による高次高調波スペクトルを高指向性・バンド幅を狭窄化,高強度化すること,(2) プラズマ励起の高調波増幅媒質を発生させること,(3)パラメトリック増幅高調波をプラズマ励起のアンプ媒質に入射させ,時間・空間コヒーレントプラズマX線レーザーを発生させる.このうち,(1), (2)については研究実績の概要で述べたように,本年度までに予定通り終了している. しかしながら,当初は平成30年度にビームタイムを確保してフルコヒーレントプラズマ励起X線レーザーの実験を行う予定であったが,レーザー施設(量研機構)の空調設備の入れ替え作業のため,実験を行うことができなかった.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
6月にまず第一回目のフルコヒーレントプラズマ励起X線レーザーの発生実験を行う.ここでは,増幅媒質となるプラズマのターゲット材としてモリブデンを用い,さらに高次高調波の次数を43次,あるいは,45次とし,オシレーターを調整することによりこれらの波長が18.2nmとなるようにする.パラメトリック増幅された高品質の高次高調波をシード光としてプラズマ増幅媒質に入射することにより,時間的にも空間的にもコヒーレントなプラズマX線レーザーの発振を試みる. また,11月と2月には同様の実験を行う.ここではレーザーの発振波長を13.9nmへと短波長化することを試みる.そのため,ターゲット材を銀に変更する.また,高次高調波の次数も57次とする.最終的に目指すレーザーの特性は,波長13.9 nm, パルス幅がフーリエ限界パルスである 400 fs,出力は 2マイクロJ以上のフルコヒーレントプラズマ励起X線レーザーである.
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