中性子は物質透過能力等の優れた特長を持つ解析プローブである。しかし、ビーム強度は大強度施設といえども絶対的に不足しており、中性子の適用範囲に限界を与えている。これは中性子の幅広い利用を促進する上で克服すべき重要な課題である。この克服には優れた中性子光学技術が不可欠となる。我々は多極磁場(6極磁場等)が中性子の高精度かつ高効率な制御に極めて有効であることをこれまでの研究で見出した。そこで本研究では、超伝導体内に多極磁場による磁束格子を作り、中性子をこの格子で回折させることで、中性子ビームを強い集光力で集光する新手法を世界に先駆けて開拓することを目指している。前年度までに中性子ビームを集光するのに最適な磁束格子を超伝導体内に作る磁石と超伝導体のデザインを行い、超伝導体部分にニオブ単結晶(形状:円柱、直径12mmφ、方位:(111)//円柱軸)を磁石部分に異方性フェライト磁石(形状:角形、断面:5mm×5mm)を使用した6極磁場システムを開発、4Tesla横磁場マグネット内に設置し、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子小角・広角散乱装置(TAIKAN)を利用して、集光性能を白色パルス中性子について測定した。今年度は集光性能をさらに高めるために、超伝導体部分にニオブ単結晶(形状:円柱、直径10mmφ、方位:(111)//円柱軸)を磁石部分にネオジム磁石(形状:角形、断面:5mm×5mm)を使用した6極磁場システム及び4極磁場システムを開発し、集光性能を白色パルス中性子について測定した。その結果、多極磁場による中性子回折を検証することができた。
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