研究課題/領域番号 |
17H02818
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
羽島 良一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (30218432)
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研究分担者 |
松葉 俊哉 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教 (00635477)
宮本 修治 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 特任教授 (90135757)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レーザー・コンプトン散乱 / ガンマ線 / 結晶分光器 |
研究実績の概要 |
レーザー・コンプトン散乱に基づく次世代高輝度ガンマ線源の性能を最大限に引き出し、利用範囲を拡大するためには、次世代ガンマ線源に適応したガンマ線光学素子が必要である。本研究では、次世代ガンマ線源のビーム発散角に適合した大きなアクセプタンスを持った1-2 MeV 領域の回折素子として、モザイク結晶と櫛歯型結晶を提案し、これらを用いた二結晶分光器の設計・製作・評価を行うことを目的としている。モザイク結晶は厚みを変えることでアクセプタンス(入射ガンマ線の発散角度と分光帯域)を変えられる。櫛歯型結晶は、振動を印加することでアクセプタンスを可変とできる特徴を持つ新たなガンマ線光学素子である。 本年度は、(1) シリコン・モザイク結晶によるガンマ線回折実験、(2) シリコン櫛歯型結晶の製作を行った。具体的な成果を下記に記す。 ガンマ線回折実験は、兵庫県立大学ニュースバル放射光施設のビームライン、BL01にて行った。蓄積リングを周回する1GeV電子とC02レーザー(波長10.6μm)の衝突散乱で発生したレーザー・コンプトン散乱ガンマ線を直径2mmの鉛コリメータで切り出し、エネルギー1.7 MeVの準単色ガンマ線を得た。このガンマ線をシリコン・モザイク結晶に入射し、結晶の角度を変えながら回折ガンマ線の強度を測定した。得られたガンマ線の強度は、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線の角度、エネルギー相関を考慮したモンテカルロ・シミュレーションの計算結果とよく一致した。また、結晶のアクセプタンスは、Co-60線源を用いた測定結果と矛盾しないことを確認した。 前年度に行ったアルミ製モックアップの振動試験結果を参考に、シリコン櫛歯結晶の設計を行い、これを製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、モザイク結晶、櫛歯型結晶を用いたガンマ線分光実験を行う計画である。櫛歯結晶についてはアルミ製モックアップの試作と振動測定、および、有限要素法解析により振動の様相を明らかにし、帯域可変分光器の実現に必要な条件が整っていることを確認し、シリコン櫛歯結晶の設計と製作を終えた。へき開性のあるシリコン単結晶を櫛歯状に加工し、ホルダーに固定するにあたっては、結晶の加工に実績のあるメーカーの助言を受け、適切な形状および加工方法を選択した。完成したシリコン櫛歯結晶は、ピエゾ素子で振動印可できることを確認した。また、モザイク結晶を用いたガンマ線回折実験を完了した。本実験は、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線の結晶による回折を世界で初めて測定したものである。実験結果の解析を行うため、電子ビームとレーザーのパラメータ(エミッタンス、衝突点におけるサイズと角度広がりなど)を任意に入力し、これから発生するレーザー・コンプトン散乱ガンマ線をシミュレーションするためのコードを開発し、汎用のモンテカルロ・シミュレーションコードであるGeant4に実装した。本コードを用いた実験結果の解析の結果、モザイク結晶は、当初の目的であるガンマ線分光に加えて、レーザー・コンプトン散乱ガンマ線の角度、エネルギー相関を測定するツールとしても利用できることを確認した。以上の進捗状況から、本研究が「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までに設計製作したシリコン製の櫛歯結晶について、レーザードップラー振動計による振動測定を行い、アルミ製モックアップの測定結果と比較検証する。兵庫県立大のニュースバル放射光施設にて、シリコン櫛歯結晶によるレーザー・コンプトン散乱ガンマ線の回折、分光実験を行う。櫛歯に与える振動の大きさを変えることで、帯域可変特性が得られることを確認する。開発したモンテカルロ・コードを用いて、実験結果の検証を行う。次世代レーザー・コンプトン散乱ガンマ線源として、光陰極電子銃からの低エミッタンス電子ビーム生成等の先端加速器技術、および、高出力レーザー、レーザー蓄積装置などを組み合わせた施設が世界中で検討され、一部、建設が進んでいる。このような次世代レーザー・コンプトン散乱ガンマ線源のパラメータを仮定したモンテカルロ・シミュレーションを行い、本研究で開発した帯域可変分光器を次世代レーザー・コンプトンガンマ線源に適用した場合の有用性を評価する。
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