研究課題/領域番号 |
17H02832
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加藤 文元 東京工業大学, 理学院, 教授 (50294880)
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研究分担者 |
齋藤 秀司 東京工業大学, 理学院, 教授 (50153804)
三井 健太郎 神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (70644889)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リジッド幾何学 |
研究実績の概要 |
●ヘンゼル的リジッド幾何学の基盤構築については、その基礎的部分の構築は順調に進んでいる。基本的には従来のリジッド幾何学との比較において、ヘンゼル的場面における留意点のほとんどが明るみになってきた。特にそのホモロジー代数的側面における困難や、技術的問題点がどこにあって、どのような形での解決策が合理的であるかといった点については、かなりの進捗があった。 ●これらの基礎理論構築を踏まえて、将来的応用に向けた実験的試論の推進を図ったところ、楕円曲線や志村多様体などの数論幾何的空間の構造解析や、代数サイクル理論への応用など、当初期待された方向性については、技術的側面も含めて知見は深まったと言える。その上で、解析多様体の有理点に関するピラ・ウィルキー型の定理への非アルキメデス的側面からの応用という、新しい応用の可能性が拓けた。これはワイツマン研究所(イスラエル)のGal Binyamini氏との共同研究から得られた知見であり、今後もこの方向の研究を発展させていくことが十分に価値のあることであり、その技術的側面についても理解が深まってきている。 ●初期研究体制の構築と充実化については、ヘンゼル的リジッド幾何学の基盤構築体制(加藤・三井)と実験検証体制(加藤・斎藤)、および代数幾何学や数論幾何学など既存の幾何学体系への応用企画体制(加藤・斎藤・三井)ともに、基本的な研究体制の足場の構築は完了し、さらなる発展へ向けてその基盤環境の充実をプロモートする段階に入ったと言える。その基盤体制の強化により、今後の戦略的研究の発展的推進が可能になっている。 ●以上より、基盤構築・応用企画・研究体制構築のいずれにおいても、基本的には順調な状況が続いており、その推進の継続と発展が望まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要において記したように、本研究の初期体制における「基盤構築」・「応用企画」・「研究体制構築」のいずれにおいても、概ね、当初期待された成果があがっている。のみならず、解析多様体の有理点に関するピラ・ウィルキー型定理への応用など、当初は予測していなかった方向性の発見もあり、その意味では、順調+αの状況に至っていると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
●ハイブリッド型幾何学の基盤構築については、その一般論展開において構想された基礎理論を踏まえ、より一般的なハイブリッド型幾何学の構築へ向けた研究を戦略的に継続する。具体的には、すでに得られているザリスキー主定理のヘンゼル的類似などの発展形として、ヘンゼル的リジッド幾何学特有の〈拡張可能性質〉の一般論のさらなる展開を目指す。 ●将来的応用に向けた実験的試論構築については、以下のような具体的方策を検討している。例えば、楕円曲線や志村多様体などの代数・数論幾何学的対象の構造理解や、その部分多様体や代数サイクルの理解、特に対数的幾何学的な視点を交えたこれらの理論への視角への応用を見据えて、基盤的理論の応用可能性を、より現実的なものとしなければならない。そのため、今までの第一歩的な理論構築の段階から、次第に、実験的応用への方向性を明確化し、初期の理論形成における基本的方向性をさらに具体化するための予備的考察を行う。また、最近の研究から明らかになった新しい方向性として、解析多様体の有理点問題への応用が考えられるが、このような具体的な数学現象の観察を通じてそれらの構造をどのくらい詳細に、ハイブリッド型幾何学が明らかにすることができるかについて、さらに深い理解を得ることを目指す。 ●これらの研究計画を遂行する上での研究体制を高いレベルで維持するために、さらに高いレベルの研究や具体的な応用問題の探索など、新しい方向性を見据えた研究の展開を図る必要がある。そのための具体的方策として、(1) ヘンゼル的リジッド幾何学の基盤構築の発展的継続(加藤・三井) (2) 実験数学による検証(加藤・斎藤) (3) 代数幾何学・数論幾何学および対数的幾何学への応用(加藤・斎藤・三井)という、前年度までの基本的な3体制の発展的継続と戦略的推進に加え、(4) 有理点問題への応用可能性の探求を新しい研究体制の軸に据えることとする。
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