研究課題/領域番号 |
17H02834
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 保 京都大学, 理学研究科, 教授 (20211716)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 保型形式 / 保型表現 / 二次形式 / エルミート形式 |
研究実績の概要 |
今年度はGross-Keating不変量の研究で進展があった。まず、2次形式のGross-Keating不変量については論文がAmerican Journal of Mathematicsに掲載された。この研究成果については2017年8月にベトナムで開かれた研究集会「Automorphic forms and related topics」および2017年9月に大阪市立大学で開かれた研究集会で口頭発表を行った。また、エルミート形式のGross-Keating不変量とSiegel級数の研究に進展があった。とくにエルミート形式の簡約定理に基づき,変形Gross-Keating不変量を定義することができ、Gross-Keating不変量、変形Gross-Keating不変量とさらに補助的な不変量でSiegel級数が定まるという予想を定式化することができた。この予想は二次形式のSiegel級数の理論より複雑な理論を必要とするもので、これにより二次形式の理論とエルミート形式の理論違いがより明らかになったものと思われる。これらの結果は室蘭工業大学の桂田英典氏との共同研究であり、この研究成果については2018年1月に数理解析研究所で開かれた保型形式シンポジウムで口頭発表し、現在論文を執筆中である。また、桂田氏、外国人特別研究員のSungmun Cho氏、東北大学の山内卓也氏らと2次形式のGross-Keating不変量を具体的に計算するアルゴリズムを研究し、これについて現在論文を投稿中である。また、ヒルベルト・ジーゲル保型形式のリフティングに関するリフティングの構成に関しては京都大学の山名俊介氏との共同研究による論文を現在投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はエルミート形式のGross-Keating不変量の研究で進展があり、エルミート形式のジーゲル級数の理論の大枠を構成することができた。このエルミート形式のGross-Keating不変量の研究において、エルミート形式には変形Gross-Keating不変量の導入が必要であることがわかり、これによりエルミート形式のGross-Keating不変量の研究が大きく進展した。とくにエルミート形式のジーゲル形式が変形Gross-Keating不変量にも依っていることは二次形式の場合と大きく異なる点であり、このことが明らかになったという点でも興味深い成果であると思われる。これらは室蘭工業大学の桂田英典氏との共同研究であり、当初の研究目標のおよそ7割を達成したと思う。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては桂田英典氏との共同研究によるエルミート形式のジーゲル級数の理論を完成させ、研究成果の発表を行うことを目標にする。平成30年度は長野県白馬村でヒルベルト・ジーゲル保型形式に関する研究集会を開き、国内外から関連分野の研究者を招いて最新の研究成果の発表および情報交換・ディスカッションを行う予定である。また千田雅隆氏を保型形式の研究を行う研究員として雇い、当該分野の研究を行ってもらうとともに若手の研究者の支援を行う。千田氏は保型形式の理論のみならずp進L関数の理論にも詳しいので千田氏との討論を通じての理解を深める予定である。 また、平成30年6月にシンガポールで開かれるPan Asian Number Theory Conferenceにオーガナイザーとして参加し、アジアの整数論の研究者と討論を行うとともに最新の研究成果について情報交換を行う予定である。
|