本年度は研究の最終年度であるため、二次形式とエルミート形式のGross-Keating不変量について包括的に研究を行った。二次形式のGross-Keating不変量についてはある程度満足のいく形の結果をすでに得ることができていたが、有限体上の二次空間対を経由することによりさらに簡明な形で不変量を定義することができた。より詳しく言うと、局所体の整数環上の二次形式から、剰余体上の二次形式の増大列の組を作ることができ、このデータによりSiegel級数が本質的に定まっていることが明らかになった。これについては室蘭工業大学の桂田英典名誉教授との考慮で論文を投稿中である。Siegel級数の研究の応用として、桂田教授との共同研究により、Siegel保型形式のDIIリフトのFourier係数の評価を与える結果を得て論文として発表した。また、桂田教授、東北大学の山内准教授、PSOTECHのCho准教授、Lee研究員らとの共同研究により、2進体上のSiegel級数を効果的に計算するためのアルゴリズムを与え、論文として発表した。エルミート形式のSiegel級数はGross-Keating不変量,変形Gross-Keating不変量,および補助的なHasse不変量というGK三つ組で決定されると考えられる。エルミート形式のGK三つ組の構成に関しては論文を執筆し、近々投稿する予定である。 今年度はコロナ禍により研究集会等に対面で参加することはほとんどできなかったが、PCなどの研究用の機材や研究用の書籍を購入することにより研究環境の改善を図った。
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